「Web3.0時代のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)」の開発を進めるナナメウエが、トークン(暗号資産)を発行して資金を調達するIEOの検討を進める。暗号資産取引サービスで国内大手のbitFlyerが引受取引所として、同計画を後押しする。
IEO(Initial Exchange Offering):未公開企業が株式を証券取引所に上場させて資金を調達するIPO(新規株式公開)に対して、IEOでは企業やプロジェクトが独自の暗号資産(仮想通貨)を売り出して資金を調達する。
ナナメウエとbitFlyerは8月23日、オンライン記者会見を開き、ナナメウエが計画するIEOの構想を発表した。bitFlyerは現在、同IEOに伴う審査を進めており、IEOの実施時期や調達規模、発行するトークンの詳細については非開示とした。
2013年設立のナナメウエは、世代や趣味・趣向などでコミュニティを形成するSNSの「Yay!」を開発。「すべての人に居場所を」のコンセプトを掲げ、2020年1月に運営をスタートさせた。
SNSがメディア化する中で新たな居場所が必要
ユーザーは基本的に匿名で参加でき、コミュニティ活動を行うことができる。TwitterやLINE、テレグラム(Telegram)などに類似する機能を持ち、ユーザー登録数はすでに550万人を超える。
会見に出席したナナメウエ・代表取締役の石濵嵩博(いしはま たかひろ)氏は、世界で使われているSNSでは現在、多くのユーザーが気軽に投稿することすらできない状況にあると指摘する。
「投稿することを躊躇してしまい、見るだけのSNS利用が増えていることは、SNSがメディア化してきているということではないだろうか」とした上で、Yay!は、ユーザーが「心から素を出せるSNS」としての設計を徹底していると強調した。
同社はYay!の上にトークンが流通するエコシステムを作り、ユーザーが同サービスの運営に直接関与することができるWeb3時代のSNSを構築する計画だ。また、ナナメウエは今後、Yay!の開発計画などをホワイトペーパーにまとめ、公開する方針だ。
bitFlyerでのIEOを実施した後、発行するトークンは海外の取引所でも販売していきたいと、石濱氏は述べる。Yay!の海外市場展開について、同氏は、「挑戦していきたい。TelegramやTwitterというより、メタバース(仮想空間)の存在を意識している。やはりユーザーにとって居心地の良い場所・コミュニティ空間を作っていきたい」とコメントした。
Web3.0:Web3とも呼ばれ、ブロックチェーンなどのピアツーピア技術に基づく新しいインターネット構想で、Web2.0におけるプラットフォーマーによるデータの独占や、改ざんの問題を解決する可能性があるとして注目されている。
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石濵氏は現在31歳。青山学院大学・社会情報学部に在学中にサンフランシスコに留学。米Concept Art House社で事業開発業務に従事した後、タイでコミュニケーションデータを基盤に企業のAI活用を支援する企業を設立してきた。
ナナメウエは今年4月、総額16億円の資金をシリーズBラウンドで調達している。
日本では昨年7月、国内初となるIEOが暗号資産取引所のコインチェックで実施された。ハッシュパレット社が開発したNFTプラットフォームのパレットが、コインチェックでトークンの「Palette Token(ティッカーはPLT)」を販売して、約10億円の資金を調達している。
|編集:佐藤茂
|トップ画像:ナナメウエのスタッフ/ナナメウエ提供