2022年7月の暗号資産(仮想通貨)マーケットは、6月から反転、全面高となった。
ドージコイン(DOGE)や柴犬トークン(SHIB)などのミームコインについては、+8%と小幅上昇にとどまったものの、イーサ(ETH)の+57%、分散型金融(DeFi)銘柄の+52%、メタバース銘柄の+35%が市場をけん引。ビットコイン(BTC)の+21%を大きくアウトパフォームした。
イーサリアムのロードマップ
イーサリアムについては、いよいよ大型アップデート「マージ(Merge)」が目前に控える。 Mergeの詳細については、coindesk JAPANの記事があるので、ここでの言及は割愛するが、このMergeによりイーサリアムは、コンセンサス・アルゴリズムをプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行することになる。
イーサリアムのポータルサイト「ethereum.org」によれば、この移行により最大99.95%ものエネルギー使用を削減できるようになるという。Mergeが完了すれば、よりサステナブル(持続可能)で環境にやさしい「エコ」なイーサリアム時代の幕開けとなる。
そのMergeの本格稼働日が、2022年9月19日になることが明らかとなった。8月6日~11日頃に予定されているテストネット「ゴエリ(Goerli)」での試運転の後、問題がないことが確認できればメインネットに実装される予定だ。
7月21日にパリで開催されたイーサリアム・コミュニティ・カンファレンス(EthCC)において、イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が示したロードマップによると、Merge後にはさらにSurge、Verge、Purge、Splurgeの4段階のポストMergeフェーズが控えており、Mergeにより全体の55%が完了するという。
買い戻す大口投資家
迫りくるMergeを歓迎するかのような上昇相場であったが、イーサリアムの大口投資家「クジラ」もETHのリバウンドに合わせてETHを買い戻し始めたようだ。
クラーケンのリサーチチームである「クラーケン・インテリジェンス(Kraken Intelligence)」は、ビットコインのクジラを1,000BTC(約31億円)以上を持つアドレス、イーサリアムのクジラを1万ETH(約22億円)以上を持つアドレスと定義している。
7月12日にクジラが保有するETHは8,070万ETHまで減少したが、ETH価格のリバウンドとともに底を打ち、月末には8,120万ETHまで回復。クジラの数は月を通してほとんど横ばいで、1,291アドレスで月を終えた。
一方、ビットコインのクジラの動きは穏やかで、保有量が797万BTCから791万BTCに、クジラの数も2,205アドレスから2,141アドレスへと、共に微減となった。
吉田友斉:慶應義塾大学経済学部卒業。新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)にて大手金融機関の監査、アドバイザリー業務等に従事後、金融庁に入庁。検査局において金融機関の検査業務に従事。2018年7月に暗号資産(仮想通貨)取引所「Kraken」を世界的に運営する米国Payward Inc.に入社。2018年11月Krakenの日本法人であるPayward Asia株式会社の財務・リスク・コンプライアンス部門統括取締役に就任。2022年7月より現職。 公認会計士(日本)。
※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。
|編集・構成:佐藤茂
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