この1カ月間、暗号資産(仮想通貨)市場はイーサリアムブロックチェーンの「Merge(マージ)」の潜在的な影響をめぐる憶測に揺り動かされている。
最大の疑問は、現行のプルーフ・オブ・ワーク(PoS)から、高速かつエネルギー効率に優れると期待されるプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行が、イーサリアム(ETH)と関連する暗号資産の価格にどのような影響を与えるかだ。
そして来月に予定されているマージが近づくなか、市場のシナリオは捻じれ続けている。
データサイトKaikoのレポートによると、イーサリアムが19日に大きく下落したことで、デリバティブ市場の建玉は急減した。多くのトレーダーがマージンコールを迫られ、取引を清算したという。
だが22日、多くの資金が再びデリバティブ市場に戻ってきた。「価格が1600ドルを割ると、建玉は急増した」とKaikoは記している。
取引高、逆転
イーサリアムとビットコイン(BTC)の週ごとの合計取引高に占めるイーサリアムの割合が57%に達し、2018年以来の高水準となった。前回のピークは、2021年5月の下落相場での55%だった。
「7月のイーサリアム取引の主な原動力は、マージをめぐる楽観的な見通しの高まりとグローバルなリスクセンチメントの改善。しかし、先週の下落はイーサリアムが依然として変動の大きな取引であることを示した」(Kaiko)
イーサリアムのフォークは?
多くのイーサリアムマイナーが、現行のPoSチェーンのサポートを続けようとするかもしれないとの憶測は根強い。イーサリアムクラシック(ETC)と、マージ後にフォークする可能性があるとされるETHPOWは、マージ後の選択肢として注目されている。
Kaikoによると、イーサリアムクラシックは、年初からのパフォーマンスで見ると、イーサリアムやビットコイン、さらにはビットコインからフォークしたビットコインキャッシュ(BCH)を上回っている。しかし、先週は20%以上下落した。
一方、ETHPOWは8月にスタートしたときの高値140ドルから60%以上下落して、50ドル付近となっている。トレーダーの注目が薄れるなか、取引高も最初の週から66%減少した。
マージに関する懸念、例えば、スケジュールの遅延、移行の失敗、ライバルとなるPoWフォークチェーンの存在などはまだいくつか残っているものの、そのほとんどは誇張されているとアルカ・リサーチ(Arca Research)のアナリスト、ニック・ホッツ(Nick Hotz)氏は語った。
「3つのテストネット(Ropsten、Sepolia、Goerli)と、9つのシャドーフォークでのマージはすべて成功した。テスト中に見られたちょっとした不具合は、テスト環境で行われたことから生じたもので、実際のマージはおそらく、スムースに完了するだろう」(ホッツ氏)
イーサリアムブロックチェーンが特定のTTD(total terminal difficulty)、つまり特定の演算能力の量に達するとマージが実行される。現在、マージは9月15日頃と推定されている。
「TTDに達すると、たとえ不具合があっても、イーサリアムはPoSに移行する」とホッツ氏は述べた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Kaiko
|原文:Ethereum Merge Drama Continues as Traders Pile Out, Then Back In