NFT保有者は、購入した資産の知的財産権を保有していない可能性がある。米暗号資産運用会社ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)のリサーチ責任者アレックス・ソーン(Alex Thorn)氏が語った。
暗号資産(仮想通貨)エコシステムの進化や発展のリサーチを専門にしている同氏は8月24日、CoinDesk TVで「NFTアートプロジェクトの大部分は(中略)基盤となるコンテンツについての実際の所有権を伝えていない」と述べた。
ソーン氏のコメントは、NFTとその知的財産権についての懸念を浮き彫りにしたギャラクシー・デジタルの新しいレポート「A Survey of NFT Licenses: Facts & Fictions」を反映している。レポートは、現在のNFTの大きな問題の1つは、発行者がNFTを管理していることと指摘した。
「こうしたトークン(=NFT)の1つを購入したとき(中略)、メタデータが示すメディアを購入しているのではなく、実際には発行者からライセンスを購入している」(ソーン氏)
ギャラクシー・デジタルが検討したトップ25のNFTプロジェクトのうち、唯一「World of Women(WoW)」のみがNFT保有者に「基盤となるアート作品の真の所有権を与えようとしている」と同社は述べた。だがレポートによると、WoW NFTのオリジナルの発行者が、オープンシー(OpenSea)のようなマーケットプレイスでNFTを販売する場合、2次購入者に知的財産権を譲渡する必要があるかどうかはまだ不明確だという。
仮にそうだとしても、NFTのほとんどは「発行者のライセンス付き」であるため、発行者はライセンスをどのように扱うか、そして最終的にNFT保有者がライセンスに従ってNFTをどのように使用できるかを監督できる。
このことは、Bored Ape Yacht Club(BAYC)のライセンス契約でも明らか。NFT購入者は「基盤となるBored Ape、アートを完全に所有する」と書かれているとソーン氏は指摘し、「これは客観的に見て誤り」と述べた。
「NFT保有者は、アートを完全に所有するわけではない。もしそうだとすれば、ユガラボ(Yuga Labs)は保有者にライセンスを提供する必要はない」
NFT発行者は実質的に「販売しているコンテンツの知的財産権について、購入者を欺いている」可能性があるという。
「ユガラボは間違いなく、商用利用ライセンスの最前線に位置し、きわめて制限的で、パーソナルユースのみ」と考えているようだ。透明性を向上させるために、1つの解決策としては、ユーザーがNFTを購入したときの権利をアップデートすることだと同氏は述べた。
また「誤解のないように言うと、こうしたライセンスはいつでも、なんの理由もなく、(発行者が)変更・取り消し・修正できる」とソーン氏は付け加えた。また発行者は知的財産権を保有しているため、変更を「NFT保有者に通知する必要さえない」。
昨年、NFTアートのエコシステムは飛躍的に拡大し、現在、その価値は1180億ドル(約16兆円)を超えている。
ソーン氏は、NFTの価値はこの数カ月下落しており、発行者は業界のさらなる成長を左右し得ると述べた。「NFTが革命であり、デジタル財産権であると考えているなら、まだ始まったばかり」。
一方、ユガラボの担当者は「現時点で、本件について付け加えることは何もない」と述べた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinDesk TV(キャプチャ)
|原文:Most NFT Projects ‘Convey No Actual Ownership’: Galaxy Digital Research