普通ではないデータは、大量のビットコイン(BTC)──2億ドル(約280億円)以上──が数年ぶりに移動したことを示している。アナリストはどう解釈すべきか、頭を悩ませているようだ。
8月28日、データ分析プラットフォーム「CryptoQuant」によると、少なくとも7年間は動いていなかった5000ビットコインが移された。翌日、LookIntoBitcoinによると、さらに別の5000ビットコインが送金されたという。
アナリストは、取引データだけでは重大な結論を出すには不十分で、なぜビットコインが移されたのかについて明確な証拠はないと述べている。
ビットコインが史上最高値の約6万9000ドルから2万ドル前後まで大幅に下落しているにもかかわらず、長期保有者が市場から退こうとしているのかもしれない。あるいは単に、何らかの管理上の変更かもしれない。
「だが間違いなく、強気サインではない。どのような影響があるかは何とも言えない」とCryptoQuantは述べた。
Coin Metricsのブロックチェーンデータエンジニア、アントワーヌ・ル・カルベス(Antoine Le Calvez)氏も、この取引に気づいた。カルベス氏は、取引は米大手暗号資産取引所クラーケン(Kraken)と何らかの関係があると述べた。
「最も可能性の高いものから順に、クラーケンの古いコールドストレージ・アドレス、クラーケンの店頭(OTC)取引、クラーケンのユーザー」と同氏はメールでコメントした。
くラーメンにコメントを求めているが、当記事執筆時点までに返答はなかった。
長く休眠していたビットコイン
長い間休眠していたビットコインの移動は、注目を集めるイベントだ。
2020年5月、ビットコインの生みの親サトシ・ナカモト氏がビットコインを少しずつ動かしているのではないかとの憶測で、市場は一時騒然となった。ナカモト氏のものと思われるウォレットをアナリストは注意深く監視している。彼の保有高はきわめて大きく、仮に売却されれば、ビットコインは下落するだろう。
今年、長く休眠していたビットコインの大規模な取引が何件か見られている。CryptoQuantによると、3月、ビットコイン価格が4万7700ドルのときに1万ビットコイン以上、5月には2800ビットコイン、7月、2万3000ドルのときに1100ビットコイン以上が取引されたという。
「1000~1万ビットコインを保有するアドレスでは、過去1カ月に保有高が増加し、3万5000ビットコインに上昇している」とIntoTheBlockのリサーチ調査責任者、ルーカス・アウトミュロ(Lucas Outumuro)氏は大口保有者の幅広い傾向について語った。
こうしたデータはもう重要ではない?
理論的には、複数のウォレットで暗号資産を保管しておけば、市場のボラティリティが高いときに保有資産を効率的に管理できるだろう。また専門家は、古いウォレットがビットコインを移動させることは、さほど珍しいことではないと述べた。
「このような初期のビットコインウォレットは、定期的にアクティブになっている」とブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)のリサーチディレクター、キム・グラウアー(Kim Grauer)氏はコメントした。
また、ビットコイン市場は、こうした単一の、説明のつかないデータよりも、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ、インフレ率、雇用統計などの主要なマクロ経済動向により大きな影響を受けるまで成熟したともいえる。
IntoTheBlockのアウトミュロ氏は、ビットコインのデータは「システム内の流動性が低いため、短期的にはマクロ経済との相関関係と比べると、あまり重要ではないかもしれない」と述べた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:LookIntoBitcoin
|原文:As 10,000 Long-Dormant Bitcoins Finally Trade, Observers Wonder What’s Up