現在の税制度が日本の暗号資産(仮想通貨)を軸とする産業の国際競争力を低下させるとして、楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏が代表理事を務める新経済連盟(新経連)は7日、暗号資産に関する2023年度税制改正要望を政府に提出した。
新経連は要望書の中で、スタートアップなどの企業やプロジェクトが独自のトークンを発行・保有する場合、期末時点のトークンを時価でははなく簿価で評価できる制度を導入すべきと主張。
現行の法人税制では、IEOによりトークンを発行した企業がそのトークンを保有する場合、期末時において時価評価され、その含み益は課税対象となる。新経連は、未実現利益への課税は主要先進国では例がないと指摘した上で、スタートアップを中心とした国内のWeb3.0企業が海外に転出する原因の1つとなっていると述べる。
IEO(Initial Exchange Offering):未公開企業が株式を証券取引所に上場させて資金を調達するIPO(新規株式公開)に対して、IEOでは企業やプロジェクトが独自の暗号資産(仮想通貨)を売り出して資金を調達する。
Web3.0:Web3とも呼ばれ、ブロックチェーンなどのピアツーピア技術に基づく新しいインターネット構想で、Web2.0におけるプラットフォーマーによるデータの独占や、改ざんの問題を解決する可能性があるとして注目されている。
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また、スタートアップの事業成長と拡大を支援するため、スタートアップが発行したトークンを第三者が保有する場合、短期売買目的でないものについては時価ではなく簿価で評価するよう要望した。
個人の税制については、昨年の税制改正要望と同様、暗号資産取引から生じる利益を申告分離課税の対象とするよう求めた。
日本の暗号資産における税制を巡っては、同業界の2団体、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が8月に、同様の税制改正要望書を金融庁に提出している。
同団体は以下の改正を要望した:
・分離課税
暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。暗号資産デリバティブ取引についても同様とする。
・法人税
期末時価評価課税の対象を市場における短期的な価格の変動、または市場間の価格差を利用して利益を得る目的(短期売買目的)で保有している市場暗号資産に限定し、それ以外のものを対象外とすることを要望する。少なくとも喫緊の課題への対応として、まず自社発行のトークンについて対象から除くことは必須である。
・資産税
相続により取得した暗号資産の譲渡時の譲渡原価の計算について、取得費加算の特例の対象とすることや、相続財産評価について、上場有価証券と同様、相続日の最終価格の他、相続日の属する月の過去3カ月の平均時価のうち、最も低い額を時価とすることを要望する。
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|編集:佐藤茂
|トップ画像:新経済連盟の税制改正要望書の表紙