Merge後、イーサリアムの値動きは?──ステーキングされたイーサリアムは売却されるのか

ブロックチェーン分析企業ナンセン(Nansen)は9月12日、今週予定されているイーサリアムブロックチェーンのPoS移行「Merge(マージ)」に関して浮かび上がっている懸念についてのレポートを発表した。

懸念とは、いわゆる「ステーカー」の相当数がチャンスを得た瞬間にイーサリアム(ETH)を大量に売却するのではないか、つまりイーサリアムは下落するのではないかというものだ。

今週、すべてが計画通りに進めば、イーサリアムは13年という短い歴史の中で最も洗練されたアップグレードを達成する。

Mergeに先立ち、2020年12月にビーコンチェーン(Beacon Chain)がスタートして以来、イーサリアムをチェーンに預け入れながら報酬を得ること、いわゆる「ステーキング」が可能になった。これまでに約200億ドル(約2兆9000億円)相当、供給量の11%を占めるイーサリアムがステーキングされている。

売却まで最大300日

ナンセンによると、ステーキングされたイーサリアムの70%以上は、購入時よりも価値が下落している。損失を抱えた保有者は売却する可能性が低いため、考え方によっては良い状況とナンセンは述べた。利益が出ているのは、わずか18%。

さらに言えば、イーサリアムのステーカーは、ステーキングのロックが解除されるまであと6カ月~12カ月待たなければならない。イーサリアム財団は、大量売却を防ぐための手段のようなものも提案している。

ナンセンの計算によると、現在のイーサリアム保有者がステーキングしたイーサリアムをすべて売却する場合、期間は最大300日かかるという。つまり、ステーキングされたイーサリアムがMergeを期に大量に売却されることはない。

ただし、最近、特にMergeが話題になったことでイーサリアムを購入した人たちがMerge後に売却する可能性は残っている。「噂で買い、ニュースで売る」だ。

テクノロジーでは解決できない問題

ナンセンのレポートには、他にも注目すべき点があった。わずか5つの組織でステーキングされたイーサリアムの64%以上を占めていることだ。5つのうち3つは暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)、クラーケン(Kraken)、バイナンス(Binance)で、ステーキングされたイーサリアムの約30%を占めている。

最大のシェアを占めたのは、DAO(自律分散型組織)が運営するオープン金融プラットフォームのLidoでシェアは31%にのぼる。

こうした集中はイーサリアムの中立性、そしてトランザクションが検閲される可能性についての深刻な懸念を引き起こす。実際、単に理論的な話ではない。

米財務省がミキシングサービスのトルネードキャッシュを制裁対象に加え、米国内のユーザーに同サービスの利用を事実上禁止したことを受けて、イーサリアムのバリデーターはトルネードキャッシュに関連するウォレットをブラックリスト化するかどうかを決めなければならない。

これは、テクノロジーでは解決できないタイプの問題だ。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Nansen Casts Doubt on Merge-Initiated Staked ETH Sell-Off