2022年8月、DeFi(分散型金融)セクターもマーケット全体のトレンドに合わせて失速し、約2割の下落を記録した。
トークン(暗号資産)別では、代表的なDEX(分散型取引所)であるパンケーキスワップ(Pancake Swap)のガバナンストークン、ケーキ(CAKE)は+2%とセクター全体をアウトパフォームした一方で、代表的なDeFiプロジェクトMakerDAOのガバナンストークン、メイカー(MKR)は3割弱の下落を記録し、セクター内で明暗が分かれた月間となった。
DeFiセクター全体のパフォーマンスとしては苦しい月間だったものの、DeFiプロジェクトそれぞれを見てみると、しっかり成長を遂げたプロジェクトも見受けられる。
例えば、AMM(自動マーケットメイカー)であるバランサー(Balancer)は131%も手数料収入を増加させた。レンディングを手がけるアーべ(Aave)やコンパウンド(Compound)もそれぞれ55%、3%の手数料収入増加となった。逆に、コンベックスファイナンス(Convex Finance)、カーブ(Curve)、Pancake Swapはそれぞれ30%、18%、9%の手数料収入減少となった。
マネロン対策を進めるDeFi
DeFiセクター最大級のDEXを営むユニスワップ(Uniswap)の開発を主導するUniswap Labsは、ガバナンス投票を行い、運営予算7,400万ドルとともにユニスワップ財団(Uniswap Foundation)の設立を決定した。
これにより、既に存在する助成金プログラムを合理化させていくとのこと。また、DEXとしては、ブロックチェーン分析を手がけるTRM Labsとの協働により253ものアドレスをブロック、ブラックリスト化したことが明らかとなった。
Uniswapがブラックリスト化されたデータを公にするのは初めてのことで、これは米財務省等の動向と関係しているものと思われる。
2022年8月8日、米財務省の外国資産管理局(OFAC)は、ミキシング(取引の匿名性を高める)サービスを手がけるトルネードキャッシュを制裁対象として指定した。これに呼応するかのように、オランダ当局はそのサービスの開発者を逮捕するに至った。Uniswapによる一部ウォレットのブラックリスト化は、これら当局の動向と無関係ではないと考えるのが自然だ。
そもそも、金融庁も参画するマネーロンダリング(AML)及びテロ資金供与対策(CFT)に関する金融活動作業部会(FATF、Financial Action Task Force)は、2021年10月以降、DeFiプロジェクトを主導する組織は、完全な「分散化された(Decentralized)」ものではないと位置付けており、それをコントロールし得る開発者や保守を行う自然人や法人には、AML/CFTに関する規制を準拠することが求められるという立場を取っている。
暗号資産業界におけるロビー活動を担うコインセンター(Coin Center)は、FATFの主張は憲法及び法律に違反している可能性があるとの見解を明らかにしている。
日本の暗号資産業界では、DeFiトークン(暗号資産)の取扱い(上場)は2022年9月19日現在、未だ見られていない。AML/CFTにおけるリスクを踏まえると、DeFiトークンの国内流通に踏み切れない点は理解するが、一方で現状のままでは、岸田政権が推し進めるWeb3.0の中核的な概念であるDeFiにおいて、日本が世界に乗り遅れることに繋がりかねない。
国をあげた議論が早期に進むことが望まれる。
吉田友斉:慶應義塾大学経済学部卒業。新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)にて大手金融機関の監査、アドバイザリー業務等に従事後、金融庁に入庁。検査局において金融機関の検査業務に従事。2018年7月に暗号資産(仮想通貨)取引所「Kraken」を世界的に運営する米国Payward Inc.に入社。2018年11月Krakenの日本法人であるPayward Asia株式会社の財務・リスク・コンプライアンス部門統括取締役に就任。2022年7月より現職。 公認会計士(日本)。クラーケンHPはこちら:https://k.xyz/3Bt
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|編集・構成:佐藤茂
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