イーサリアムブロックチェーンの大規模アップグレード「Merge(マージ)」が9月15日に完了するまでの数年間、イーサリアムマイナーは約3億4100万ドル(約487億円)相当のイーサリアム(ETH)を貯め込んできた。
Mergeから約1週間、暗号資産アナリストはマイナーによるイーサリアムの売却が短期的な下落圧力になる可能性があると警告している。イーサリアムはすでに過去1カ月で約19%下落している。
「マイナーによるイーサリアムの売却は、上昇モードを再開するために今後数カ月乗り切らなければならない大きなハードル」とニュースレター「Bankless」のルーカス・キャンベル(Lucas Campbell)氏は9月19日に記した。
OKLinkのデータ(上図)によると、マイナーは1週間前くらいから保有するイーサリアムを売却し始めたようだ。
マイナーは9月12日〜19日にかけて、1万6000ETH以上を売却している。その結果、マイナーのイーサリアム保有残高は約24万5000ETH(約3億1900万ドル、約456億円)まで減少した。
IntoTheBlockのリサーチ責任者ルーカス・アウトミュロ(Lucas Outumuro)氏は、減少の理由を「マイナーが他のチェーンに移動したため」と分析、マイナーは「保有するイーサリアムを売却して利益を得ている」と述べた。
またイーサリアムブロックチェーンからフォーク(分岐)したイーサリアムPoW(ETHPOW)のエアドロップに備えて、取引所にイーサリアムを移したマイナーもいるだろうと同氏は指摘した。ETHPOWは現状、あまりうまくいっていないようだ。
「噂で買って事実で売れ」
Merge前の数週間、イーサリアムは上昇していた。Mergeによって機関投資家の参入が増えるとの推測もあった。だが実際はMerge後、イーサリアム価格は下落、アナリストが「buy-the-rumor, sell-the-fact(噂で買って事実で売れ)」と呼ぶ値動きとなった。
また下落は、FOMC(米連邦公開市場委員会)と重なり、積極的な利上げが予想されていたため、株式市場から暗号資産までリスク資産には下落圧力となった。
デジタル資産運用会社アルカ(Arca)の最高投資責任者ジェフ・ドーマン(Jeff Dorman)氏は、マイナーの動きがMerge後の下落につながった可能性はあるが、すべてのマイナーが保有するイーサリアムを売却するわけではないと述べた。
「一部のマイナーは投機家になり、もっと良いタイミングを狙って保有し続けるだろう。あるいは、ステーカーになり、新しいネットワークに貢献するかもしれない。いずれにせよマイニングビジネスは終わった」(ドーマン氏)
とはいえ、マイナーの保有残高はCoinDeskのデータによると、イーサリアムの総供給高1億1900万ETHのほんの一部に過ぎない。
別のチェーンに移行した元イーサリアムマイナーもいるようだ。プルーフ・オブ・ワーク(PoW)ベースのアルトコインは大幅に上昇し、過去90日でレイブンコイン(RVN)は64%、イーサリアムクラシック(ETC)は75%上昇した。
ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)のエコノミスト、イーサン・マクマホン(Ethan McMahon氏は「マイナーがイーサリアムを保有する元々の理由が、価値保存や投資目的」であれば、マイナーによる売却はイーサリアムから離れるための「一時的なシフト」と考えていると述べた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:OKLink
|原文:Ethereum Miners’ $319M Crypto Hoard Hangs Over Market After Merge