ビットコイン/英ポンドの取引高が上昇、その要因は?──リスクヘッジか投機か

BitstampやBitfinexなどの大手暗号資産取引所に上場されているビットコイン/英ポンド(BTC/GBP)ペアの動きが、かつてないほど活発になっている。だがその要因は、投資家がポンド下落から身を守るためにビットコインにシフトしたためなのか、それともボラティリティから利益を得ようとしたトレーダーが原因なのか、アナリストの意見はわかれている。

英ポンドが過去最低の1.035ドルまで下落した9月26日、前述の2つの取引所に上場しているBTC/GBPペアの取引高は8億8100万ドル(約1275億円)に達した。コインシェアーズ(CoinShares)のリサーチ責任者ジェームズ・バターフィル(James Butterfill)氏の今週初めのツイートによると、これは過去2年の1日あたりの平均取引高7000万ドルの12倍にあたる。

ポンド安は、新政権が発表した減税計画をめぐるイギリスの財政健全性への懸念が引き起こした。今月、ポンドはドルに対して約7%下落し、2016年12月以来最も大きな下落となった。

「ビットコイン/英ポンドペア取引の急増は、ビットコインが法定通貨の明白な脆弱性から利益を得る可能性を浮き彫りにした」とBitfinexのアナリストはメールで述べた。

暗号資産データ企業メッサーリ(Messari)のアナリスト、トム・ダンリービー(Tom Dunleavy)氏は28日に発表したレポートに同様の意見を記し、ヨーロッパの投資家は、英ポンドとユーロが急激に下落しているなかでビットコインを購入していると述べた。

英ボンドからビットコインへのシフトか

だが一部のアナリストは、取引高から投資家の動きを読み取ることは難しいと述べている。買い手が存在すれば、売り手も存在するので、ポンドが下落したときに投資家はビットコインを「売った」と主張することも可能だ。

「ビットコインをユーロや英ポンドで売る場合も取引高は急増する」と市場ニュースサービスおよび取引コミュニティプラットフォームMacrodesiac.comの創業者で、TradingViewのイギリスでのグロースを担当するデビッド・ベレ(David Belle)氏は述べた。

ビットコイン支持者は長い間、ビットコインを法定通貨やゴールドよりも優れた選択肢として称賛してきた。4年ごとに半減期があり、供給が増え続ける法定通貨とは真逆の動きがプログラムに組み込まれているからだ。

暗号資産は、高インフレ、政府の政策、激しい通貨安のために自国通貨への信頼が揺らいでいるトルコや他の国々で受け入れられている。

ボラティリティ狙いか

とはいえ、取引量の増加は、為替レートの変動やトレーダーがポンドやユーロを売って暗号資産を購入したためだろうとトレーダーでアナリストのアレックス・クルーガー(Alex Kruger)氏は述べた。

ビットコインを購入した人は、長期保有を考えていないかもしれない。法定通貨が下落すると、投資家はしばしば暗号資産を購入し、従来の銀行での取引を回避しながら資金を海外に移し、ドル建ての資産を購入する。

ポンドをはじめとする主要通貨のインプライド・ボラティリティは、新興国通貨よりも高くなったとブルームバーグは伝えた。

出典:Bloomberg

ボラティリティが高くなると、トレーダーは利益を得るために大量に売買するため、しばしば取引高が増える。つまり、BTC/GBPペアの取引高の増加は、インフレヘッジとしてビットコインを購入しようとする投資家ではなく、投機筋の動きから生じた可能性がある。

ポンド安となったことでトレーダーが裁定取引のチャンスを狙った可能性もある。

暗号資産データ企業カイコ(Kaiko)のリサーチディレクター、クララ・メダリー(Clara Medalie)氏は「BTC/GBPペアの取引高の急増は、必ずしもトレーダーがビットコインに資金を分散化していることを意味しているわけではない」と語った。

出典:Kaiko

BTC/GBPペアの取引高は増加しているが、全体から見るとまだ低いままだ。

「BTC/GBPペアは、バイナンスではわずか9500万ドルしか取引されていない。BTC/USDTの95億ドルに比べるとごくわずか」と英領バージン諸島に拠点を置くIDEG Asset Managementの最高投資責任者マーカス・ティーレン(Markus Thielen)氏は述べた。

「取引高の状況が本当にイギリスに住む人たちによってけん引されているなら、バイナンスのBTC/GBPペアの取引高はもっと多いはず」と同氏は付け加えた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Kaiko
|原文:Surging Bitcoin-Sterling Trading Volume Points to Hedging Demand for Crypto, or Does It?