NFTとポップカルチャーの融合【NYCコミコンレポート】

ニューヨークのジャビッツ・センターで今月に開催された究極のポップカルチャーの祭典『NYCコミコン2022』に、コスプレをした20万人ほどのファンが集まった。

各ブースにはおなじみのぬいぐるみやポスターが並んでいたが、いくつかの伝統的コレクティブルブランドは、ウェブ3の要素を取り入れ、ブロックチェーンテクノロジーがメインストリームのコレクターに歓迎されている様子が垣間見れた。

NFT保有者がアニメの展開を決定

ブロックチェーンアニメ『Krapopolis』
出典:FOX

多くの参加者は、お気に入りの映画やテレビ番組のクリエーターが参加するほかのイベントにはない座談会や交流会を楽しみにしていた。

その1つが、初のブロックチェーン基盤のアニメシリーズが謳い文句の新番組『Krapopolis』だ。人気アニメ『リック・アンド・モーティ』を手がけるダン・ハーモン(Dan Harmon)氏が製作したこのアニメは、2023年にフォックスTVで放映される。

この番組では、『Krap Chickens』と呼ばれるNFT(非代替性トークン)を販売。このNFT保有者には、実世界でのイベントや、製作の舞台裏コンテンツのバーチャル視聴ルームへの限定アクセスや、番組内の投票に参加できる権利が与えられる。

コミコンで先行上映されたエピソード1では、NFT保有者たちが、どの船乗りが伝説の巨大生物クラーケンに叩かれるかを投票で決定した。

NFT保有者たちはさらに、コミコンでハーモン氏が参加したパネルディスカッションの最前列に座ることができ、サインをもらうための列でも優先的に並ぶことができた。

これまでのところ、1万420個用意されたKrap Chickenのうち、3000個が売れた。「1万420という数字は、鶏がマラソンを走るのにかかる時間から来ている」と、ブロックチェーン・クリエイティブ・ラボ(Blockchain Creative Labs)でKrapopolisプロジェクトを管轄するマット・ビルフィールド(Matt Bilfield)氏は説明してくれた。

NFTで甦る忘れられたスーパーヒーロー

Slam-Girl NFT
出典:OneOf

大手オークションサイト、イーベイのブースでは、忘れられたスーパーヒーロがNFTコレクションとして復活していた。

『Slam-Girl』はコミック界の伝説的存在スタン・リー(Stan Lee)氏とアートディレクターのウィル・ムニョ(Will Meugniot)氏が、スパイダーマンシリーズのパロディとして2001年に製作。

リー氏が創設した製作・マーケティング会社のスタン・リー・メディアが、ドットコムバブルの崩壊のあおりを受けて倒産したため、この作品は「失われた宝」と考えられていた。

「Slam-Girlを見つけた時には、失われたアーク(聖櫃)を見つけたインディアナ・ジョーンズのような気分だった」と、Slam-Girlのキュレーターで、マンガ出版社マーベル・パブリッシングの元執行副社長のシャレル・ローズ(Shirrel Rhoades)氏は述べる。「誰も見たことのないスタン・リーのスーパーヒーローがまだいたなんて、誰が考えただろう?」と続けた。

現在はスタン・リー・ホールディングスのディレクターを務めるローズ氏は、同社の所有する資産は、彼の友人のコレクターがそのすべてを購入し、キュレーションを頼むまで、眠った状態にあったと説明。そこでローズ氏は、リー氏と共にSlam-Girlを作り上げたムニョ氏に連絡を取った。

コミコンでリリースされた最初のSlam-Girl NFTコレクションでは、4人の悪役と戦う様々なシーンが使われている。こちらのNFTは、NFTプラットフォームのワンオブ(OneOf)とのパートナーシップにより、イーベイで販売されている。

「このNFTを実際に所有するファンが、将来的な物語の展開に投票権を持つコミュニティを形成することになる」と、ワンオブの創業者兼CEOリン・ダイ(Lin Dai)氏は語った。

ムニョ氏によれば、第2、第3のコレクションでは、NFT保有者が、番組内のキャラクターとして登場する自分達の独自NFTを手にすることが可能になるという。

「これは、マンガ好きの太った子供としての自分の経験が元になっている。太った子供が本当のスーパーヒーローになるなんて最高だ。(中略)新しいテクノロジーによって、自分にそっくりのNFTや、自分にそっくりのグッズを手にすることができるようになるのだ」と、ムニョ氏は語った。

コミック本と拡張現実の出会い

NYCコミコン2022でのイーベイのブース
出典:Doreen Wang/CoinDesk

今回のコミコンでも最大規模の展示をおこなっていたのが、ライセンス済みのデジタルコレクティブル向けのマーケットプレイスで、マーベルのパートナーでもあるヴェヴェ(VeVe)だ。

ヴェヴェのリース・スケラーン(Rhys Skellern)氏は、3月に240万ドル強で売れた1939年発売のマーベル初のコミック本を見せてくれた。ヴェヴェを使うと、レアなコミック本を拡張現実で見ることができるのだ。

「これは、世界でも最も高価なコミック本の1つだ。触ることもできない。容器から取り出すこともできない。(中略)(我が社では)実世界ではほとんどの人に手の届かない知的財産(IP)にアクセスできる機会を提供している」とスケラーン氏は語った。

マーベルは2021年6月以来、ウェブ3への進出のために、ヴェヴェに自社の知的財産のライセンス供与を行なっている。

このパートナーシップの前に、レイヤー2スケーリングソリューションImmutableXで運営されるヴェヴェは、初のカーボンニュートラルNFTプラットフォームになる計画を発表した。スケラーン氏によれば、マーベルやディズニーがデジタルコレクティブルの世界に進出している理由の1つは「持続可能性」だ。

「実際の製品を製造するよりも、NFTの方がはるかに環境に優しい」と、スケラーン氏は説明した。

伝統的コレクティブルをウェブ3へ

NYCコミコン2022の会場に向かう参加者たち
出典:Doreen Wang/CoinDesk

コミコンを締めくくったのは、先日NFTとリンクしたDCコミックを発売したファンコ(Funko)主催のハロウィーンパーティー。

200ドルの特別なチケットを購入した参加者たちは、ハロウィーンをテーマにしたグッズや、獲得できるNFTなどが詰まったバッグをお土産に持ち帰った。

参加者はファンコのファンから、グッズの転売を目的とした人たちまで様々。ある参加者は、フェイスブックグループに投稿したグッズで、すぐに1100ドルの利益を上げることができたと語ってくれた。

ダイ氏によれば、今年のコミコンでも、伝統的コレクターと暗号資産ネイティブの類似性が見られた。

「一つ願いが叶うとしたら、(中略)NFTと呼ぶのはやめて、デジタルコレクティブルと呼びたい。すでに熱烈なコミュニティを形成しているようなコミックファンには、すごく共感してもらえるものになると思う」と、ダイ氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:NYCコミコン2022(Doreen Wang/CoinDesk)
|原文:Marvel, Funko Debuted New Web3 Integrations at Comic Con NY 2022