ビットコインと法定通貨の相関関係の理由【オピニオン】

ビットコイン(BTC)は、法定通貨との対話だ。

独立したものではなく、文脈の中、他との関係の中に存在する。ビットコインに文脈を与えるのは、法定通貨の存在。ビットコインも同様に、法定通貨に文脈を与えらるようになることを期待したい。

ビットコインと法定通貨の関係は、暖かさと寒さ、光と闇のようなものだ。ビットコインは通貨介入の不在を象徴する通貨であり、法定通貨は通貨介入のために最適化され、それによって定義される通貨である。

法定通貨がなければ、ビットコインは単なる通貨。法定通貨も、ビットコインがなければただの通貨である。

このような視点からスタートして、ほぼあらゆる資産にとって明らかにネガティブな状況となっている現在のマクロ経済環境とビットコインが、なぜ相関関係を持っているのかを考えてみよう。

人々がビットコインについて話す時に、次のようなコメントを耳にするはずだ。

「ビットコインは伝統的市場から独立したものであるはずではなかったのか?」

「ビットコインはインフレに対するヘッジになるはずではなかったのか?」

現代金融の代替オプションとなるはずの資産であるビットコインが、なぜ伝統的市場や中央銀行の政策と相関関係を持っているのだろうか?

ビットコインは法定通貨に代わるオプションだ。ヘッジとも、脱出用ハッチとも、好きに呼ぶことができるだろう。現在支配的になっている通貨システムが破綻したり、機能停止に陥った場合(あるいはもうすでにそうなっているかもしれない)に備えて保有しておけるものだ。

金融緩和と引き締め

この点を深く考えてみると、ビットコインと現行システムには関係があるということに気づくだろう。現行システムが無謀な拡張政策を行い、通貨交換比率を低下させたら、ビットコインはその比較対象となっている、価値を低下させられた法定通貨に比べて、より多くの価値を持つはずだ。

では、その逆が起きたらどうなるのか?覇権国家が金融引き締め政策を実施し、通貨供給を縮小させたらどうなるのか?流動性がなくなったらどうなるのか?マイナス成長になったらどうなるのか?

金融緩和の時にビットコインが法定通貨と比べて価値を増したとすれば、法定通貨システムが引き締まり、縮小した際には、ビットコインの価値は下がるはずだ。

実際にその通りになった。新型コロナウイルスのパンデミックへの対処として、給付金配布の計画と大幅な量的緩和が発表された頃には、ひと月ほどにわたって、6000〜9000ドルでビットコインを買うことができた。

それから1年ほど、ビットコインはあらゆる主要資産クラスを凌ぐパフォーマンスを見せ、史上最高値から大幅に下落した現在でも、パンデミックの始まりの頃、拡張的通貨政策が始まる前に買っていたとしたら、ビットコインはS&P 500やナスダック100よりも優れた結果を残しているのだ。

ビットコインは2020年6月以来、9500ドルから現在の1万9500ドルへ値上がりし、100%を超えるリターンを記録。一方のS&P 500は3000から3700と、リターンは23%強だ。金融緩和前に買ったビットコインは、高値から70%以上値下がりした今でも、主要資産クラスを上回るパフォーマンスをしている、ということである。

ビットコインの値上がりは、金融緩和の方向と一致しており、その急落は金融緩和の方向の逆転、つまり大幅な引き締めと一致している。

引き締めは、中央銀行による量的緩和政策の停止にとどまらなかった。人工的に金利を上げることも含まれ、(実際ではなくとも、少なくとも理論的には)通貨供給の一部となっている他の金融資産価格の急落も伴っていた。

金融資産、株式、不動産は、アメリカ国民が保有するドルベースの流動性の大半を占めている。ドルそのものの割合は、はるかに小さいのだ。

アメリカの金融資産が20兆ドル以上減少する場合、世界に流通するドル建ての金融資産もはるかに少なくなる。これが通貨供給の縮小ではなくて何だろうか?経済学者ポール・クルーグマンは、私の表現に同意しないかもしれないが、私は言い回しなんて気にしない。重要なのは、現実がどのように機能するかだ。

低金利、紙幣の乱発、金融資産の価値の増加によって、ビットコインは他の資産クラスを凌ぐパフォーマンスを見せた。一方、急速な利上げ、紙幣増刷の停止、金融資産の価値の急落によって、ドル建てでのビットコインの価値は大幅に下落した。

金(ゴールド)を見れば、この主張を裏付けることができる。ゴールドは現在、史上最高値から19%安。ビットコインよりも確実に値下がり幅は小さいが、それでも、市場で最も一般的な「インフレに対するヘッジ」が、インフレ率が40年ぶりの高水準で、地政学的な緊張状態もあるマクロ環境の中で値下がりしていることに変わりはない。

ここで共通しているのは、「インフレヘッジ」の議論は、インフレの本来の定義、つまり金融緩和を使わなければ意味がないということだ。消費財価格を表すように変化した定義では、ここでは役に立たない。

インフレ率の高まり

ゴールドとビットコインはどちらも、この意味ではインフレに対するヘッジだ。法定通貨供給量が拡張する時には価値が高まり、通貨供給量が縮小する時には、価値が下がるのだ。

何十年にも及ぶコモディティへの誤った投資や投資不足、サプライチェーンの混乱、ディグローバリゼーションを原因とする消費財価格の増加は、経済成長に伴って価値を増すはずの法定通貨にとって恩恵とはならない。

2022年のビットコイン価格のパフォーマンスは、ビットコインの失敗、あるいはしっかりと文脈を考慮した場合のビットコインにまつわるナラティブの失敗の証拠ではない。単に、流動性の急速な破壊と、深刻な地政学的混乱の証拠でしかないのだ。

ビットコイン投資家にとって朗報なのは、経済成長とクレジットが長期にわたって縮小すれば、ゆくゆくはシステムは完全に破綻してしまうということ。これは壊滅的だが、中央銀行がギリギリで食い止め、財政支援に乗り出すだろう。

どんなことでもあり得るが、通貨の価値の低下を避けるために必要な巧みなデレバレッジと緊縮財政を、現在の政府ができるとも、やりたいと思っているとも思えない。そのため、さらなる金融緩和、法定通貨のさらなる価値の低下が見込まれる。

その時が来れば、ビットコインは他の主要資産クラスと比べて、最もパフォーマンスの良い資産であり続けるだろう。

スティーブン・ルブカ(Steven Lubka)氏は、スワン・ビットコイン(Swan Bitcoin)の富裕投資家向けコンシェルジュサービス、スワン・プライベート(Swan Private)の責任者。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Why Bitcoin Has Been Highly Correlated With Fiat