仮想通貨市場の操作を生業にしてきた男、真実を語る

市場操作ビジネスを始めるにはどうすれば良いのだろうか?やってみれば簡単だ。

ロシア・モスクワ出身の20歳の大学生アレクセイ・アンドリューニン(Alexey Andryunin)氏は、同氏の会社が取引量の水増しを通じて、知名度の低いトークンプロジェクトが顧客を掴む手助けをしていたことをCoinDeskに赤裸々に語り、話題を呼んだ。

アンドリューニン氏はCoinDeskに対して、市場操作ビジネスについて語り、現状の市場においてなぜ操作が必然なのかという点について、同氏の考えを明かした。

「私は今20歳です。18歳の時に、仮想通貨産業に参入しました。大学で勉強中でしたが、家庭に問題があり、お金が必要でした。仮想通貨スタートアップで初歩的な内容の仕事に就きました。給料の大部分はトークンで支払われました。そのスタートアップを信頼していました。仮想通貨産業については、何も知りませんでした」と、アンドリューニン氏は語った。

そのスタートアップにて、アンドリューニン氏は、トークンの取引所への上場や、仮想通貨情報サイト、コインマーケットキャップ(CoinMarketCap)への掲載を担当していた。間もなくして同氏は、厳しい状況に置かれていることに気が付いた。

「コインマーケットキャップは当時、トークンの1日の取引高が10万ドル(約1060万円)を超えていることを掲載の要件としていました。また、上場した取引所では、まったく取引高が上がりませんでした。100ドル、200ドル、300ドルといった感じで。それでも、新規コイン公開(ICO)直後よりはましな状況でしたが」

チームは、成功するまで成功しているフリをする必要があることに気が付いた。そしてアンドリューニン氏と同氏の学友は、初めて取引ボットを作成した。

「あるアカウントから買い注文を入れ、別のアカウントから売り注文を入れ、それらを他の注文のないスプレッドの中でマッチさせます」と同氏は言う。

ボットは、スタートアップが自社のトークンをより大きな取引所に上場させ、コインマーケットキャップに掲載させるのに役立った。しかし、アンドリューニン氏はすぐに、自分と友人で独自の事業を立ち上げられることに気が付いた。同氏は、ある日、大学でのバレーボール練習に参加せずに、モスクワで開かれていた仮想通貨イベントに参加した。そして、同氏の会社、ガットビット(GotBit)の起業を支援してくれることになる最初のパートナーと出会った。

「現在私たちの製品は、取引量、価格、流動性、そして価格変動による利益獲得など、トークンの市場を完全に操作できます」と、同氏は述べた。

顧客は、ICOを行なう小規模のトークンプロジェクト。彼らは、投資家を安心させ、取引所で業績を少しばかり良く見せることを望んでいた。数年間で、ガットビットは28のプロジェクトを手助けした。

「マーケットメイクのサービスを提供することのできる企業は少なくとも100社ほどあると思います。皆コミュニティーの内部だけで宣伝を行うので、広告バナーのようなものを見かけることはありません。リンクトイン(LinkedIn)やプロジェクト独自のチャットがあればテレグラム(Telegram)、もしくは別の媒体で、メッセージを受け取ることになります。大抵このような方法で行われます」とアンドリューニン氏は語った。

アンドリューニン氏は、市場全体に対して弱気だ。

プロジェクトが取引量の水増しなしでは、本格的なプラットフォームで扱ってもらえない市場状況を産業自体が作り出した、と同氏は述べた。

「仮想通貨の世界において、コインマーケットキャップに掲載されていなければ、そのトークンは存在しないも同然ですよね?私たちのサービスや類似サービスなしでは、もしくは有名なプロジェクトのように実際に取引量が高くなければ、コインマーケットキャップに載ることはできません」と同氏は述べた。

「損をしているのは、投資家と仮想通貨産業を信じている人たちです。真剣な機関投資家たちが参入に不安を感じているのですから。しかし遅かれ早かれ、これは全て一掃されるでしょう。個人的にも、全てをきれいにして、このような状態を終わりにすることに賛成です」

そして終わりは近い。業界に対する規制は厳しくなりつつあり、ICOは今やもう終わりで、新しい顧客を見つけるのは難しいとアンドリューニン氏は感じている。それに対する対策として、ガットビットは、別の機会を模索している。しかし、市場がかつてどのようなものだったのか、という真実を共有するために、同氏の「疑問の余地のある」事業についてCoinDeskに語れて嬉しいと、同氏は述べた。

「人々はこれまでの歴史を知るべきです。仮想通貨取引所に対する新しい規制が施行される際、人々は現状の問題点から学ぶことができます。私たち、および同業者や顧客の経験は、この業界を適切に規制するために何が必要なのか。その良い例を示してくれると思います」

翻訳:山口晶子
編集:町田優太、佐藤茂
原文:Meet the ICO Pumper Who Makes His Living Manipulating Crypto Markets