バハマのペントハウスに同居、親密なルームメイトたちが運営していたFTX──多くの社員は蚊帳の外

「ショッキング」という言葉ほど、サム・バンクマン-フリード氏の暗号資産帝国の急速な崩壊に適した言葉はない。その思いは意外なことに、彼のもとで働いていた人たちや崩壊の兆候をつかんでいたと思われる人たちから溢れている。

なぜだろうか? もしかしたら、バハマの豪華なペントハウスが関係しているかもしれない。30歳のバンクマン-フリード氏はそこで、暗号資産取引所FTX、トレーディング企業アラメダ・リサーチ(Alameda Reaserch)を経営する側近たちと同居している。

その多くは、クオンツ・トレーディング企業ジェーン・ストリート(Jane Street)の元同僚で、母校のMIT(マサチューセッツ工科大学)で知り合った者もいる。バンクマン-フリード氏を含めた10人は、きわめて親密。アラメダ・リサーチのCEO、キャロライン・エリソン(Caroline Ellison)氏もその1人で、関係者によると彼女はときどき、バンクマン・フリード氏とデートしていたという。

CoinDeskは、FTXとアラメダの社員と元社員数人から話を聞いた。嫌がらせや殺害予告が続いているとして、社員/元社員は匿名を望み、本質的にはこう語った──利益相反、身内びいき、管理不在の場だったと。

知っていたのは側近だけ

「すべての運営がバハマの子供の集団によって行われていた」とある関係者は語った。

CoinDeskが話を聞いた社員/元社員は、過去1週間の出来事については何も知らされていないと述べ、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えたようにFTXが顧客資金をアラメダに流用したことを知っていたのはバンクマン-フリードCEOと側近たちだけかもしれないと付け加えた。

「サムは沈黙したまま」と別の社員/元社員は9日、CoinDeskに語った。「バイナンス(Binance)はFTXを買収する予定というチャンポン・ジャオ氏のツイートを見たとき、正直なところフェイクだと思った。しかし、サムがツイートで認め言って偽物だと思った。だがその後、サムがツイートで認めた」

バンクマン-フリード氏は、CoinDeskの報道によって危機が始まってから1週間後の9日、ようやく社員と向き合った。「退任して欲しいと思っていることは十分理解している」と社員に宛てた社内メッセージには書かれていた。

「彼らはお互いのためなら何でもする」

彼の9人の同居人の中には、FTXの共同創業者で最高技術責任者(CTO)のゲイリー・ワン(Gary Wang)氏、エンジニアリング・ディレクターのニシャッド・シン(Nishad Singh)氏、現在の混乱の中心であり、バンクマン-フリードの取引事業で、WSJが100億ドルの顧客資産が流用されたと報じたアラメダCEOのエリソン氏がいる。他の6人もFTXの社員だ。

「ゲイリー、ニシャド、サムの3人はコード、マッチングエンジン、そして資金を管理している。仮に3人がそれらを動かしたり、自分の数字を入力しても、誰も気づかないかもしれない」(関係者)

また別の関係者はこうも語った。「彼らはお互いのためなら何でもする」と。

バンクマン-フリード氏とエリソン氏にコメントを求めているが返答はない。ワン氏とシン氏には連絡できなかった。FTXの広報担当者にも彼らへの連絡を依頼している。

「何も問題ないと信じていた」

バンクマン-フリード氏の父親で、スタンフォード大学法学部教授のジョセフ・バンクマン(Joseph Bankman)氏も同社に関係している。8月にFTXのポッドキャストに出演し、手がけている慈善事業や規制関連のプロジェクトについて説明した。

ワン氏、シン氏、エリソン氏の3人は、バンクマン・フリード氏の慈善活動団体であるFTX財団の役員も務めている。

バハマでは、FTXとアラメダのオフィスはどちらも、ソラナの開発者や他の暗号資産インキュベーションプロジェクトが入居しているコワーキング施設内にある。

「すべてのステークホルダーがFTXのガバナンスに厳しい目を向けるだろう。必要とされないなら、私はいないだろう」とバンクマン-フリード氏は10日、ツイートした。

一部の社員は、バンクマン-フリード氏の最近の頻繁なコミュニケーションに賛同しているが、そうでもない人もいる。

「FTXに全財産を預けていた社員もいる。何も問題ないと信じていた」とある社員は語った。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:サム・バンクマン-フリード氏(CoinDesk)
|原文:Bankman-Fried’s Cabal of Roommates in the Bahamas Ran His Crypto Empire – and Dated. Other Employees Have Lots of Questions