【US市場】ジェネシスが引き出しを一時停止──FTX崩壊の影響止まらず

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ジェネシス・グローバル・トレーディング(Genesis Global Trading)の融資部門、ジェネシス・グローバル・キャピタル(Genesis Global Capital)は一時的に払い戻しと新規融資を停止した。FTX崩壊の影響は急速に広がっている。

ジェネシスの暫定CEO、デラル・イスリム(Derar Islim)は、流動性の新たな供給源を見つけることを含め、融資部門の解決策を模索していることを顧客に伝えた。同CEOは来週、今後の計画の詳細を説明する予定と述べた。

ジェネシス・グローバル・キャピタルは機関投資家にサービスを提供しており、同社ウェブサイトによると、2022年第3四半期末時点で融資額は28億ドル(約3900億円)に達している。ジェネシスの親会社、デジタル・カレンシー・グループ(DCG)は、米CoinDeskの親会社でもある。

イスリムCEOは、ジェネシスのトレーディングおよびカストディサービスは、引き続き完全に稼働しており、資本も運営も融資部門から独立していると述べた。

「ジェネシスの融資事業であるジェネシス・グローバル・キャピタルは本日、払い戻しと新規融資の一時的な停止という難しい決断を行った。この決定は、FTX崩壊によって引き起こされたきわめて大きな市場の混乱と業界への信頼喪失に対応するため」とDCGのコミュニケーション・マーケティング担当バイス・プレジデント、アマンダ・カーウィー(Amanda Cowie)氏は語った。

ジェネシスの発表は、FTXの流動性危機とそれに続く先週の連邦破産法第11条(チャプター11)の適用申請に続くもの。業界は今年すでに、ステーブルコインのテラUSD(UST)と、それを支えた暗号資産テラ(LUNA)の崩壊など、複数の大きな衝撃に揺れ動いている。

一方、オルタナティブ投資企業EndoTechの共同創業者兼CEO、アンナ・ベッカー(Anna Becker)氏は、FTX危機は業界が潜在的に積み重ねてきたものと捉えている。

「資金の不適切なカストディと無謀なリスクマネジメントは、知識に欠けた消費者に壊滅的な影響を与え続けている。まったく容認できない(中略)。業界関係者、そしてSEC(証券取引委員会)、FDIC(連邦預金保険公社)、その他の規制当局が協力して、投資家の安全・安心を確保し、悪質業者を一掃することを強く望む」

他のニュース

ビットコイン(BTC)は1万6500ドル付近、24時間で約1.5%下落した。イーサリアム(ETH)は1200ドル付近、24時間で約3%下落。他の主要アルトコインもおおむね下落し、FTXトークン(FTT)は14%超、セラム(SRM)は6%超の下落となった。セラムはFTXの共同創業者で元CEOのサム・バンクマン-フリード氏が共同創業したソラナ(Solana)ブロックチェーン上のDEX(分散型取引所)のネイティブ暗号資産。

暗号資産運用のグレイスケール・インベストメンツ(Grayscale Investments)は、ジェネシス・グローバル・キャピタルの引き出し停止による影響はないと述べ、投資家を落ち着かせようとしている。グレイスケールは16日、「ジェネシス・グローバル・キャピタルは、グレイスケールの投資プロダクトの取引相手やサービス提供者ではない」とツイッターで述べた。

FTXの元CEO、サム・バンクマン-フリード氏、および同社の広告に登場したセレブら──アメフト選手のトム・ブレイディ(Tom Brady)、コメディアンのラリー・デヴィッド(Larry David)、テニス選手の大坂なおみ、NBAチームのゴールデンステート・ウォリアーズなど──に対して、FTXの利回り保証口座(YBA)を不正に宣伝したとして集団訴訟が提訴された。

原告は、FTXを「砂上の楼閣」「ねずみ講」と呼び、「FTXは、顧客の資金を不透明な関連事業に流用し、YBAへの出資やローンによって得た新しい投資家の資金を、既存の投資家への利払いに使用し、流動性が保たれているかのように見せかけようとした」と述べた。

最新価格

●CoinDesk Market Index(CMI):839.84、-1.8%
●ビットコイン:16,536ドル、-1.9%
●イーサリアム:1,207ドル、-3.0%

●S&P500:3,958.79、-0.8%
●ゴールド:1,777ドル、+0.2%
●米国10年債利回り:3.69%、-0.1

マーケット分析

ビットコイン、イーサリアムはともに、日々の値動きの幅を示すATR(Average True Range)で見ると、2022年1月以降、値動きの幅は減少している。

値動きが小さいことは、投資家が利益を得る機会が少ないことを意味する。投資家は今、利益を生み出すことよりも損失を避けることに注力しており、ビットコインは1万6500ドル付近で新たな取引レンジが形成されつつあるようだ。

以前は1万9000ドル〜2万ドルの間に大きな価格合意が見られたが、最近の混乱でより低い水準に押し下げられている。

ビットコインの11月16日の推移/出典:TradingView

アルトコイン

ビットコイン、ソラナ、CM!の7日リターン/出典:CoinDesk Research

ジェネシスの引き出し停止で市場は下落、だが大口投資家は買い時を狙う:また新たな暗号資産関連企業、ジェネシス・トレーディングがFTX崩壊の影響を受けるなか、ほとんどの暗号資産は下落した。だが、機関投資家は買い時を探っているようだ。当記事執筆時点、ソラナ(SOL)は約1%下落して14ドル付近となっている。例外はアプトス(APT)、約10%上昇して4ドル付近となっている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:
|原文:Market Wrap: Genesis Withdrawal Suspension Looms Over Cryptocurrencies