FTXの創業者で元CEOのサム・バンクマン-フリード氏は、会社が崩壊した際に「プレッシャーに直面して凍りついてしまった」と11月22日、かつて率いた同社従業員に送った文書に記した。
「振り向いても、誰もいない」
FTXの社内Slackで共有され、米CoinDeskが入手した文書の中でバンクマン-フリード氏は「現在の事態を大変申しわけなく」感じていると述べた。だが同氏は、FTXが顧客や会社の資金をアラメダ・リサーチ(Alameda Research)に流用したという疑いや、アラメダが同氏を含むFTX関係者に資金を融資していたことなどには触れていない。
「こんなことになるとは思っていなかった。戻ってやり直せるなら、何でもする。皆さんは私の家族だった。私は家族を失った。私たちの懐かしい家はモニターだけの空の倉庫になっている。振り向いても、誰もいない」
「プレッシャーやリーク、バイナンス(とのFTX売却に向けた基本合意書)に直面して凍りつき、何も言えなかった」
バンクマン-フリード氏は、同社が破綻申請を行う直前の11月11日にCEOを退任。新CEOのジョン・レイ3世は、バンクマン-フリード氏が会社についてツイートしたり、記者に語ったことに対して、同氏はすでに従業員ではないと述べている。
かつての従業員に向けた文書は、同氏はすでに会社のSlackにアクセスできないため、在籍中の社員が投稿した。
リスクを認識せず
バンクマン-フリード氏は「マージンポジションの全体像」、つまり相関性の高い資産の下落がもたらすリスクを認識していなかったと記している。
「借り入れなどは、おおむねビジネスへの再投資に使われ、個人的な消費には使われていない」
一方、デラウェア州連邦破産裁判所で行われた審問でFTXの現状について述べた法律事務所サリバン&クロムウェル(Sullivan & Cromwell)のジェームズ・ブロムリー(James Bromley)氏は、FTXグループ各社からアラメダに「かなりの資金が移動」したようで、その一部は暗号資産やテクノロジーベンチャーに投資されたと語った。
「ビジネスとは無関係なものに費やされた資金も相当な額にのぼる。例えば、バハマにある約3億ドル相当の不動産の購入などだ。予備調査によると、そうした不動産購入のほとんどは上級幹部らが使用する自宅や別荘に関連したものだった」
それでも、今回の文書には連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請すべきではなかったというバンクマン-フリード氏の心情が表れている。破綻申請には「不本意ながら」同意したとしている。
「もしかしたら、まだ会社を救うチャンスがあるかもしれない。新たな投資家から数十億ドルもの真摯な関心があり、顧客を救済できるだろうと信じている。だが何かが起きるとは言えない。私が選択することではないから」とバンクマン-フリード氏は記した。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:サム・バンクマン-フリード氏(CoinDesk)
|原文:Bankman-Fried Apologizes to FTX Employees, Details Amount of Leverage in Internal Letter