30年以上も証券関連の訴訟に携わってきた私は、多数の詐欺師たちに反対尋問を行ってきた。担当した訴訟の大半は、ウォール街、証券会社、銀行、株式やデリバティブ取引所など、伝統的金融サービス分野に集中していた。
しかし2017年以降、私は自らの法律事務所の方針を、国内外の暗号資産(仮想通貨)取引所、そして伝統的金融プロダクトやサービスをディスラプト(創造的破壊)するためにブロックチェーンテクノロジーを活用するスタートアップを担当するよう転換した。
ニューヨーク・タイムズ紙の企画の一環でジャーナリストのアンドリュー・ロス・ソーキン(Andrew Ross Sorkin)氏が破綻したFTXの創業者サム・バンクマン-フリード氏にインタビューする予定だと聞いた時、私は反射的に自分だったらバンクマン-フリード氏に何を質問するか、思いついた10の質問をパソコンに打ち込んでいた。
もちろん訴訟となれば、数百もの質問とそれに付随する確認事項を準備することになる。バンクマン-フリード氏はまもなく、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストではなく、判事と対面することになる。
発言を控えろ、という弁護士のアドバイスを無視し続けている彼にぶつけてみたい、厳しい10の質問を紹介しよう。
1.原罪
FTXの利用規約には、はっきりとFTXに顧客が預け入れる資産はFTXではなく、顧客のものだと書かれている。
顧客のアカウントから資産を不正に流用することは違法行為だと認識しているのだろうか?
2.共犯者たち
FTXや姉妹企業アラメダ・リサーチ(Alameda Research)の中で、あなたがFTXの顧客資産をアラメダへと移動させていたことを知っていたのは誰か?
FTXの新CEOジョン・J・レイ3世(John J. Ray, III)氏は、あなたが「顧客資産の濫用を隠蔽するために特別なソフトウェア」を使っていたと述べている。
誰がその手助けをしていたのか?
3.お金の在りか
ニューヨーク・タイムズ紙は、破産申請後、FTXから5億1500万ドル(約700億円)が「疑わしげに送金された」と報じている。
そのお金がどこにあるのか知っているだろうか?
現在のFTX経営陣が知らないFTXの資産が、世界のどこか、あるいはコールドウォレットに保管されているのだろうか?
4.バハマでの不審
バハマ当局は、アメリカでの破産申請後、当局が管理するウォレットにFTXの資産を送金するよう命じたことを認めている。
バハマ当局がFTXの資産を送金することに手を貸したのか?
5.多額の借入
あなたは個人的に、アラメダから10億ドル(約1400億円)を借り入れている。そしてあなたの会社Paper Bird Incも、アラメダの関連会社から23億ドルを借り入れた。
合わせると、33億ドルの借り入れだ。
そのお金は今どこにあるのか?
その資産をただちに、破産管財人に引き渡すつもりはあるだろうか?
6.メディアからの愛はお金で買えるのか?
「助成金」「寄付」「投資」などの名目で、どのメディアに資金を提供したのか?
7.FTX USはまだ生きているのか?
破産申請から4日後の11月15日、あなたはFTX USはすべての顧客に返金するために十分な資産を持っているとツイートした。
それは本当か?
本当なら、なぜFTX USは破産したのか?
8.その他の投資:政治資本
アメリカの民主党候補者にあなたは多額の寄付をしてきた。2024年に民主党候補者を大統領にするために、10億ドルを支出する可能性にも言及していた。
ホワイトハウス関係者、議員、SEC(米証券取引委員会)のゲンスラー委員長のもとを何度訪れたのか? 彼らと何を話したのか?
9.秘密
FTXの破産弁護士たちは、FTXの顧客の名前を秘密にしようと必死になっている。
FTXのアカウントは、外国や国内の政治家、「リッチで有名」な人たち、ロシアの新興財閥、麻薬カルテル、テロリストグループ、抑圧的な政権によって、資産隠しやマネーロンダリングのために使われていたのか?
10.帰国の意志は?
あなたの行いによって、膨大な数のFTXの顧客が大きなダメージを被ったことを理解しているはずだ。
FTX破綻に果たした自らの役割についての刑事捜査に協力するために、自発的にアメリカに戻る気はあるだろうか?
ジェームズ・A・マーフィー(James A. Murphy)氏は、法律事務所Murphy & McGonigleの創業者兼会長。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:What a Securities Lawyer Would Ask FTX’s Bankman-Fried