話題のAI「ChatGPT」に、DeFiでのAI活用について聞いてみた──記者の仕事はなくなる?

このひと月、私のTwitterフィードは、FTXとサム・バンクマン-フリード氏に埋め尽くされていた。謝罪とインタビュー(なぜバンクマン-フリード氏はまだ公に話をしているのか?)以外は、詐欺の話ばかりで楽しい話題はない。

そう、ChatGPTを試すまでは。

OpenAIが手がけるこの新しい対話型チャットボットをまだ試したことがないなら、絶対試してみるべきだ。映画の宣伝からプログラミング、詩に至るまで、ChatGPTはほとんどどんな問いかけにも、人間のような論理的な反応を安定して返してくる。ChatGPTと話していると、iPhoneのスクリーンのロック解除するために初めてスワイプした時のような興奮が蘇る。

AIとは奇妙なものだ。暗号資産と同じようにAIも、世界のあり方にパラダイムシフトを起こす存在だと一部の人たちに持ち上げられている。しかし、金融以外に実世界での用途をあまり確立できていない暗号資産と異なり、「すべてにAIを」という主張に抗うことは難しい。AIによって完全に様相が一変していない業界をあげることはもうすぐ難しくなるだろう。

この記事では、AIがDeFiにもたらす影響についてChatGPTに聞いてみたことを紹介しよう。

ちなみに、私は怠けているのだろうか? イエス。だが、興味深い記事に仕上がっていると思うか? こちらもイエスだ。CoinDeskの誰かが、AIが私たちの仕事を奪うかどうか、突き詰めて考えなければならなかった。その誰かになれたことをうれしく思う。

AIに記事執筆を依頼

「AIを分散型金融でどのように活用できるかについて、CoinDesk向けの記事を書け」という命令をChatGPTに与えてみた。ボットは6段落からなる文章を返してきた。最初の5段落をそのまま掲載する。

最後の段落は、「メリットだけでなくリスクも含めて」という次の命令に対する返答を掲載した。それに対する返答は3段落だった。こちらもそのまま掲載する。

ChatGPTからの回答

分散型金融の人気が高まるにつれ、多くの人は、この新興テクノロジーが直面している課題に解決策を提供してくれる可能性があると、人工知能(AI)に期待を寄せている。

分散型金融、いわゆるDeFiは、ブロックチェーンネットワーク上で実施される金融取引のシステムを指す。これによって、銀行やその他の金融機関などの仲介業者なしで金融取引の実行を可能にするデジタル資産とスマートコントラクトが生まれる。

DeFiにおけるAIの潜在的ユースケースの1つは、より高度で知的なトレーディングアルゴリズムの作成だ。そのようなアルゴリズムは、市場トレンドの分析、資産価格の方向性に関するより正確な予測のために使うことができ、トレーダーが情報に基づいた投資判断を下すのに役立つ。

DeFiにおけるもう1つのAIの潜在的ユースケースは、より高度で効率的な貸付・借入プラットフォームの作成だ。AIアルゴリズムを使うことによって、これらのプラットフォームは借り手の信用度を自動的に評価したり、適切な金利を設定することができ、デフォルトのリスクを減らし、貸付プロセスをより効率的なものにできる。

さらにAIは、スマートコントラクトやその他のブロックチェーン基盤の金融取引の安全性を高めることにも使用できる。機械学習アルゴリズムを使うことによって、スマートコントラクトを自動的に監視し、脆弱性の可能性をチェックすることで、ハッキングやその他のセキュリティ上の問題を防止することに役立つ。

しかし、DeFiにおけるAIの利用には、リスクも潜んでいる。懸念の1つは、トレーディングやレンディングにAIアルゴリズムを使うことが、理解や規制の困難な「ブラックボックス」的システムを生む可能性である。規制当局がシステムを監視、管理することが難しくなり、投資家や借り手に対するリスクを生む可能性もある。

もう1つの潜在的リスクは、AIアルゴリズムがバイアスや操作にさらされる可能性だ。不平等、あるいは不正確な意思決定につながるかもしれない。例えば、AIアルゴリズムを偏った、あるいは不完全なデータでトレーニングした場合、不平等、あるいは差別的な判断をする可能性がある。このことは、レンディングや信用格付けの場合にとりわけ問題となる。偏ったアルゴリズムの利用が、特定の借り手に対する差別につながる可能性もあるからだ。

全体として、DeFiにおけるAIの利用は、大きなメリットをもたらす可能性を秘めているが、開発者や規制当局は、これらの潜在的リスクを慎重に検討し、それらに対処することが大切だ。慎重で責任あるアプローチを取ることで、意図しない結果を生まずに、AIの力を使ってDeFiの能力を高めることは可能かもしれない。

記者の仕事はどうなる?

かなり良くできているのではないだろうか?

最初のうちは少し試行錯誤したが、適切な命令を作り上げたら、ChatGPTは(退屈だが)比較的説得力のある主張をまとめ上げてくれたと思う。

とはいえ、ChatGPTは私の代わりに記事を書けるところにまでは達していないようだ。AIは人間のような回答を返すが、頻繁に何もないところから事実をでっち上げることがあるため、記事にできるような回答を得るまでに、かなり奇妙な回答をボツにしなければならなかった。

例えば、「アラメダ・リサーチは、分散型取引所で高速かつ正確なトレーディングを行うためにAIを使うクオンツトレーディング企業である」という、今となっては事実と反する回答を返してきたこともあった。

ChatGPTは今回の回答の中で、多くのポイントを網羅していたが、保険などの主要な用途、オンチェーンAIが市場操作に使われる可能性やマイニングからの報酬を最大限にしようとする悪意のある戦略によってユーザーにダメージを与える可能性などの重要なリスクに触れることはなかった。

私の仕事はまだ安泰。だが、AIがDeFiをどう変えるかだけでなく、すでにどう変えたかを説明する日は近いかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:What Does an AI Chatbot ‘Think’ About DeFi? We Asked ChatGPT