暗号資産の価格が、自分の予測した方向に動けば動くほど、大きな金利を得られる「トレンド予測に基づく変動金利型」のレンディング・サービスをFUELHASHが提供開始する。
レンディングは、ユーザーが一定期間、暗号資産を貸し出す代わりに、その分の金利を受け取るという仕組み。今回の新サービス「クリプトレンド」がユニークな点は、その金利が「暗号資産の値動きが予測どおりだったか」に応じて変動する点だ。しかも、条件次第では年利が20%以上にも及ぶ可能性があるという。
サービスを提供するのは、これまで環境負荷の少ないクリーンエネルギーによる暗号資産マイニングなどを手掛けてきた国内企業FUELHASHだ。いったい、どんな仕組みのサービスなのか? そして、なぜいまレンディングを始めるのか。代表取締役の紺野勝弥氏に詳しく語ってもらった。
「クリプトレンド」はどんなサービス?
今回始まった「クリプトレンド」は、一風変わったレンディング・サービスだ。暗号資産を預け入れて、その間の金利を受け取るところまではごく一般的なレンディングと同じ。ポイントは「暗号資産の値動きに応じて金利が変わる」という点だ。
仕組みはいたってシンプル。ユーザーのすることは、暗号資産を預け入れるときに、期間終了時点(2週間後)のタイミングで「値上がりする」か「値下がりする」かを予測するだけだ。そして予測した方向に値が動いていた場合、金利が高くなる。
おもしろいのは期間終了時点のタイミングで、予想通りの方向に大きく値動きしていた場合、もらえる金利もどんどん増えていくことだ(※上限は設定されている)。
たとえば仮に、「いま17500ドルのBTCが、13日後には値上がりしている(ブル)だろう」と予測し、BTCブルの13日プランに申し込んだ場合、BTCが28000ドル以上の場合に上限の年利26.18%、18000ドル以下だと年利1.22%というようなイメージだという。(※プラン提供の時期により、年利は変動する)
もちろん、1.5倍にも値上がりするタイミングはそうそうやってこないが、暗号資産がしばしばドラマティックな値動きを見せるのは、経験者なら身にしみているところだろう。
なお、トレンドが予測と逆方向に動いた場合でも、1~2%程度の利息は得られるルールで、元本割れは発生しない。
預け入れられる暗号資産は、ステーブルコインの「USDT」「USDC」と「BTC」「ETH」の4種類。値動きトレンドの「指標」となる通貨は「BTC」と「ETH」の2種類となる。
この金利を実現できる背景には、どんな仕組みがあるのだろうか?
FUALHASH・紺野代表によると、預かった暗号資産を運用するのは提携先、シンガポール金融当局(MAS)のCapital Market Service Licenseを取得している事業者だ。
紺野氏は「シンガポールの厳しい金融ライセンスを受けた事業者が主に担保ローンで運用している。担保も99%がビットコインとイーサリアムという流動性・信頼性の高いもので、とても安定した運用がなされている。自己勘定取引もデルタ・ニュートラルという、リスクヘッジを重視した戦略を採用している」と解説する。
「日本人の投資スタイル・趣味嗜好にピッタリ」
それでは、「クリプトレンド」はどんな人向けのサービスなのか?
サービスの核となるのは「トレンドの予測」という点。つまり、ユーザーとしては、期間終了時点の値動きを考えなければならないので、一般的な固定金利レンディングサービスに比べれば、考えることが多くなってしまうのが特徴だ。
紺野代表は「そういったひと手間かかる予測を楽しんで、面白がってもらえる人にこそ、サービスを使ってもらいたい」と力を込める。
たしかに長期保有を決め込んでいるユーザーでも、普段、業界のニュース・市場動向を追いかけているのなら、自らの「トレンドを読む力」を試してみたくなるものだ。暗号資産を貸し出すタイミングで、いったん値動きを予測してみるのは、誰にとっても良い頭の体操になりそうだ。
紺野氏は「日本人は堅実で、投資では『元本保証』の低リスク商品を好む傾向がある。しかしながら、公営競馬や競輪は根強い人気があるし、ギャンブルを題材にした映画やマンガなどもかなりの数が存在している。日本人の中には『勝負好き』な側面もあるはずだ。今回のクリプトレンドは、そんな日本人の投資スタイル・趣味嗜好にピッタリと合うサービスなのではないか」と期待する。
たしかに上振れの可能性がある一方で、もし予想と真逆の結果になったとしても元本割れはせず、もらえる金利が少なくなるだけだ。もちろん、預け入れれば一定期間動かせなくなることには注意が必要だが。
紺野氏は「シンプルなUIを用意したので、利用者は複数のプランから自分が好きなものを選ぶだけ。ユーザー登録や本人確認から始めても短ければ30分以内に利用可能になるはずだ。暗号資産投資を始めたばかりの人から、トレンド予測に自信がある人まで幅広い方に使ってもらいたい」と力を込める。
マイニング事業からレンディング事業へと展開した理由
2021年3月創業のFUELHASHがこれまで取り組んできたのは、暗号資産のマイニングに個人レベルでも投資できるサービスや、再生可能エネルギーを利用したマイニング事業など、暗号資産のインフラとなる「マイニング」に絡んだ事業だった。そこからレンディングとは会社としての方針転換なのだろうか?
紺野氏によると、従来のマイニング事業と今回のレンディング事業とをつなぐ、ひとつのキーワードがあるという。それは「クリプトを、当たり前に」というFUELHASH社のキャッチフレーズでもある言葉だ。
紺野氏はこう語る。
「暗号資産を支えるインフラのマイニング事業に個人レベルで参加できるようにしたのも、持続可能な太陽光エネルギーによるマイニング事業を始めたのも、クリプトという存在を、もっと当たり前のものにしていきたいという思いからだ。今回のレンディングも暗号資産を保有するユーザーが、もっと日常でクリプトについて考えるきっかけを増やしたいという考えで始めている」
「FUELHASH」とは、どんな企業なのか?
代表の紺野氏は、ソフトバンクグループで約8年、M&Aや資金調達、格付対応、ベンチャーキャピタル業務に従事した。その後、暗号資産取引所Quoineの代表取締役、グローバルでマイニング事業を行うBITFURYの日本代表などを経て、2021年3月にFUELHASHを立ち上げた。紺野氏は「クリプト」への期待をこう語る。
「2016年にこの業界に関わりはじめてからでも、クリプトが起こすさまざまなイノベーションを目の当たりにしてきた。貨幣の歴史を紐解いてみると、古代には石貨だったものが、金や銀になり、国の信用に基づく貨幣が出てきた。そして、リーマンショックでドルの信用が揺らいだところにビットコインが出てきたという流れがある。もはや、この流れが逆行することはないように思える」
「透明性や分散化への期待からWeb3にも大きな注目が集まっている。今後はメタバースなどでクリプトが直接使われるケースも増えてくる。業界は大激震が続いているが、クリプトそのものの有用性、その将来性に疑問の余地はないだろう」
FUELHASH社のメンバーは2022年12月現在20人ほどで、そのうちフルタイム・常勤のメンバーは4人。金融、ブロックチェーン技術などの専門家・エキスパートたちが集う「DAO型」の組織体制になっている。将来に向け、ブロックチェーン開発やAI開発にも取り組んでいる。法的側面については、ブロックチェーンの専門的知識を持った顧問弁護士と議論を固め、サービスを展開しているという。
紺野氏は「いまのブロックチェーン業界は、技術発展のスピードが段違いだ。我々の強みである意思決定の速さを生かして、次々と面白いサービスを生み出していきたい」と語っていた。
|文・編集:coindesk JAPAN編集部広告制作チーム
|画像:coindesk JAPAN・株式会社FUELHASH