イスラエルの仮想通貨投資家たちは、利益を銀行に入金することができず、銀行や規制当局からの答えを求めている。
仮想通貨にまだ馴染みのない銀行が入金の取り扱いを拒む中、イスラエルでは、仮想通貨取引による利益に対する税金、約8600万ドル(約91億391万円)が未払いとして累積している。イスラエルのメディア、ハアレツ(Haaretz)が報じた。
「税務当局はこの問題を認識していますが、責任は自分たちにない、としています。ほとんどの銀行を試しましたが「ビットコイン」という言葉を聞いた途端に、固まってしまいます」と、イスラエルの投資家ロン・グロス(Ron Gross)氏はハアレツに対して語った。
グロス氏は、2011年以来常にイスラエル税務当局に税金を納めてきたが、2017年から銀行との関係が悪化した、と述べた。イスラエルは現在、仮想通貨によるキャピタルゲインに対して、個人には25%、法人には47%の税率を適用している。
しかし、問題は税務当局にあるのではない。
ハアレツが取材した別の投資家は、アンチマネーロンダリングと顧客確認上の懸念から、銀行が資産を動けなくしている、と述べた。銀行が新興の市場と関わり合うことを望まないために、仮想通貨取引による利益で税金を支払うことはほぼ不可能となっている。
イスラエルの裁判所は2019年5月、ビットコインは資産であり、通貨ではないという判断を下した。裁判所はブロックチェーンスタートアップ、 DAVネットワーク(DAV.Network)の創業者ノーム・コペル(Noam Copel)氏の主張を退け、仮想通貨は課税対象となると述べた。コペル氏は、自身の保有するビットコインは外貨であり、そのため課税されるべきではない、と主張していた。
「仮想通貨を一切容認しない」
イスラエルの銀行業界は、リスク回避をしようとしているようだ。イスラエルビットコイン協会(Israeli Bitcoin Association)の法律顧問、ジョナサン・クリンガー(Jonathan Klinger)氏はCoinDeskに対して、全ての主要銀行は仮想通貨に対して厳格な方針を掲げている、と述べた。取引関連の入金は許可されていない。また、仮想通貨を取り扱うフィンテック企業も同様に排斥されている。
確信となる論点は問題となったままだ。方針を批判する人もいるが、仮想通貨とある程度距離をおくことは銀行の利益にかなっていると、クリンガー氏は述べ、次のように語った。
「銀行による協力はほとんど不可能のように思われます。マネーロンダリングへの懸念に起因するものでなくても、仮想通貨産業が銀行にもたらす競争をなくすために、このような行動が取られた可能性もあります」
イスラエル税務当局の元副局長であり、現在は仮想通貨関連の税申告プラットフォーム、ビットタックス(Bittax)のCEOである、ギディ・バー・ザカイ(Gidi Bar Zakay)氏は、銀行業界の方向性は規制当局によって決められる、と述べた。銀行は適切なガイダンスなしには、アンチマネーロンダリング関連の混乱という余計な責任を背負いたがらない。
「過去には、仮想通貨関連の資金が一部の銀行に送金可能な場合もありました。しかし、銀行は近年、仮想通貨分野に関わる企業や個人に対する方針を厳格化しました」と、ザカイ氏はCoinDeskに語り、次のように続けた。「銀行は現在、イスラエルの中央銀行であるイスラエル銀行からのガイドラインを待っている状態です」
仮想通貨取引所ビッツ・オブ・ゴールド(Bits of Gold)のCEO、ユヴァル・ローチ(Youvel Rouach)氏によると、リテールバンクの方が友好的ということもなく、そのうちの20%は「仮想通貨を一切容認しない」方針を掲げている。残りの80%もプロセスを大変なものとしている。
不満を抱えた企業の大半は、資産を海外に移している。ビットコインの税務を取り扱うザカイ氏のビットタックスでさえも、イスラエルでは口座を開設することができない。ザカイ氏は、多く企業が資産をスイスへ移していると語った。
イスラエルの民間セクターの仮想通貨に対する受容度は、多くの点において、中東全体と同様だ。これまでの規制当局の意見はしばしば、ペースが遅く、サンドボックスプログラムといった政府の監督を伴っている。例えば、仮想通貨取引所レイン(Rain)は、中央銀行の2年間にわたるサンドボックスプログラムを経て、7月にドバイでローンチされた。
翻訳:山口晶子
編集:町田優太
写真: Image via CoinDesk archives
原文:Israeli Cryptocurrency Traders Locked Out of Banking System: Report