自民党デジタル社会推進本部は12月16日、web3プロジェクトチーム(web3PT)がまとめた「web3政策に関する中間提言」を発表した。10月から10回にわたって開催されたweb3PTにおける議論の方向性が記されている。
自民党のWeb3に対するアプローチ
自民党は2022年1月、NFT関連の政策を議論するために「NFT政策検討プロジェクトチーム」(NFT政策検討PT)を発足させ、4月に「NFTホワイトペーパー」を発表した。
一方、NFTはWeb3における一要素に過ぎないことから、党内ではWeb3の包括的な議論を求める声が高まり、NFT政策検討PTはweb3PTに改組、今回の中間提言は、その後の議論の内容がまとめられたものだ。
8つの重要テーマに提言
中間提言は、Web3関連の重要テーマに関する提言骨子として、以下の8つをあげている。
- トークンによる資金調達を妨げない税制改正
- 個人が保有する暗号資産に対する所得課税の見直し
- 暗号資産発行企業等の会計監査の機会確保
- JVCEAにおけるトークン審査体制の強化
- LLC型DAOに関する特別法の制定
- パーミッションレス型ステーブルコインの流通促進のための措置
- 無許諾NFTへの対策と消費者保護
- NFTビジネスの賭博該当性を巡る解釈及び二次流通からの収益還元方法等の整理
特に注目される3つについて提言内容を紹介するとともに、簡単に解説する。
1.トークンによる資金調達を妨げない税制改正
問題の所存
令和5年度税制改正において、発行した法人が継続保有するトークンを法人税の期末時価評価課税の対象から除外する旨の措置を講ずるとの方針が示された。一方で、日本国内の投資家からのトークン投資を促進する上で、他社発行の保有トークンに対する課税等の課題が残存している。提言
スタートアップ支援を含むweb3ビジネスのエコシステムの発展を支援する観点から、他社発行トークンを保有する場合、そのうち短期売買目的でないトークンを期末時価評価課税の対象から除外し、取得原価で評価する措置を速やかに講じるべき。
今年、成長が期待されるWeb3スタートアップが税制の問題から海外に拠点を移す動きが注目された。自社発行したトークンに対する期末時価評価課税の問題は、改正の方針が示されたものの、スタートアップ投資によってトークンを保有する企業に対する課税の問題はまだ解決されていない。
つまり、国内に有望なWeb3スタートアップが存在しても、国内投資家は投資を躊躇してしまい、投資は海外VCなどが中心となる可能性がある。結果的にリターンは海外投資家が手にすることになる。
Web3スタートアップ支援を加速させるためには、他社発行トークンに対する課税問題の解決は急務といえる。
2. 個人が保有する暗号資産に対する所得課税の見直し
問題の所在
暗号資産取引から生じた所得は雑所得(最高税率55%)で課税されるなど、諸外国に比べて厳しい税制による納税者の海外流出が増加との指摘がある。提言
暗号資産の取引に係る損益を申告分離課税の対象とすること、暗号資産に係る損失の所得金額からの繰越控除(翌年以降3年間)を認めること、暗号資産デリバティブ取引も同様に申告分離課税の対象にすることが検討されるべき。
こちらは主に暗号資産の個人投資家にかかわる提言。申告分離課税が認められば、暗号資産投資のハードルはより低くなるだろう。
5. LLC型DAOに関する特別法の制定
問題の所存
地方創生、社会課題の解決、コミュニティ運営等、国内におけるDAOの活用事例やDAOの活用を検討する事例は増加しているが、DAOの構成員の有限責任を確保し、かつ、機動的なDAOの設立・運営に適した明文化された法人・組合形態が存在しない。提言
DAOの実態と比較的親和性が高い合同会社をベースに、LLC型のDAOに関する特別法を制定し、会社法上の合同会社の規律及び金融商品取引法上の社員権トークンに関する規律を一部変更して適用することが有力な選択肢と考えられる。早急な法制化を目指す観点からは、議員立法による法制化も検討されるべき。
DAO(自律分散型組織)は大きな可能性を秘めているものの、法整備が追いついていない現状では、コンプライアンスなどの問題から企業の参加にはハードルがあり、投資も進まない。
DAOとはいえ、実世界のなかで活動するには、法の裏付けは欠かせない。
今後の日本のWeb3戦略に色濃く反映
もちろん、今回触れなかった5つの提言も重要なものだ。さらに中間提言では、NFTの2次流通時のロイヤリティに関するルールの明確化などについても引き続き検討をしていくべきとしている。NFTのロイヤリティはグローバルでも大きな課題となっている。
自民党「web3プロジェクトチーム」(web3PT)の提言は、日本の今後のWeb3戦略に色濃く反映されていく可能性が高い。暗号資産、ブロックチェーンを取り巻く現状は厳しいが、期せずして日本に注目が集まる状況にもなっている。
web3PTは今後、中間提言ついてさらにヒアリングと検討を進め、2023年春をめどにホワイトペーパーを発表する予定だ。
|文:株式会社ロイター板
|編集:coindesk JAPAN編集部
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