暗号資産クオンツ取引会社Pythagoras Investment Management LLCは、2022年の混乱期をプラスで乗り切った。同社ファンドは、FTX崩壊などにさらされながらも、年8%の上昇を記録した。とはいえ、市場の混乱によって一部投資家が様子見となったため、運用資産残高は4000万ドル以下に半減している。
Pythagoras(ピタゴラス)の創業者兼CEOミッチェル・ドン(Mitchell Dong)氏は、同社の市場をリードした戦略、FTX崩壊後にリスクミティゲーション戦略を変化させたこと、暗号資産の将来にはまだ希望があると考える理由について語った。
マーケット・ニュートラル・ファンド戦略
同社の「Pythagoras Arbitrage Fund」は12月、わずか0.1%の上昇だったが、2022年通期では8.8%上昇した。
「我々はただスプレッドを探すだけ。ソフトウェアがチャンスを見つけるたびに、安く買って高く売るチャンスを同時に探す」と25年以上のヘッジファンド運用経験を持つドン氏は述べた。
トレンドを追う「Momentum Fund」は12月、0.4%下落したが、それでも2022年は8.1%上昇した。このファンドは、テクニカル指標に基づいて、ロングとショートの両方のポジションを取る。
FTXの破綻
同社のArbitrage Fundの主な脅威は、カウンターパーティーリスク。即座に取引を行うために、同社は取引所に資産を預けておく必要がある。ピタゴラスは少なくとも12カ所の取引所に資産を分散し、1カ所に資産の10%以上を預けないようにしているという。FTX破綻前、同社は資産の10%をFTXに預けていた。
FTX破綻が伝えられた後、同社はすぐにすべて資産の引き出しを要求したが、回収できたのは7%にとどまった。残りの3%の損失は、まずFTXの取引所トークンであるFTTを空売りし、次にシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のビットコインとイーサリアムの先物がバイナンス(Binance)の価格よりそれぞれ3~5%安くなっていたことを利用して相殺した。
ピタゴラスはその後、取引所に対するリスク管理を強化し、現在は最高の技術と信用格付けを持ち、カウンターパーティーリスクが最も低いと判断される取引所を優先している。
現在の市場動向
ドン氏は、資金の払い戻しを求め、状況が落ち着くまで撤退を望んでいた同社の大口投資家と協議した。こうした投資家はピタゴラスと長い付き合いがあり、将来、暗号資産投資を再開する予定だ。
「バッドニュースは払い戻しがあったこと。グッドニュースは競争が少なくなり、価格変動や取引チャンスが増えたことです。以前行われていた裁定取引の機会が再び戻ってきた」とドン氏は述べた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:ミッチェル・ドン氏(Pythagoras Investment)
|原文:How a Crypto Quant Firm Shook Off the Bear Market – and FTX Exposure