バイナンスUSD(BUSD)の不鮮明な先行きは、ドル連動型ステーブルコイン市場をかき乱しており、あるアナリストは、勝者と敗者の劇的な入れ替えを加速させる可能性があると述べている。
今週、規制当局がBUSDの発行者に新規発行を停止するよう命じたことで、暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)は、取引ペアとしてBUSDを優先するという9月の決定に大きな影響を受けるリスクを負った。
一方、ステーブルコイン市場の2つのビッグネーム、USDコイン(USDC)とテザー(USDT)には好機となった。カイコ(Kaiko)のリサーチャー、コナー・ライダー(Conor Ryder)氏は、マーケットメーカー、そしておそらくバイナンス自体もBUSDよりもトレーダーに人気の高いUSDTを利用するため、USDTが短期的な勝者となる可能性が高いと述べた。
USDコインは最近、CEX(中央集権型取引所)ではあまり使われず、DEX(分散型取引所)で積極的に使われているが、混乱によって新たなチャンスが生まれたという。
CEXからDEXへの流れ
トレーダーがステーブルコインを中央集権型取引所から移動させているため、動揺が生じているようだ。ナンセン(Nansen)によると、イーサリアムブロックチェーン上のUSDCやUSDTなどの取引所からの移動は、9日間連続で預け入れを上回っている(純流出)。昨年11月上旬のFTX破綻をきっかけに本格化した出金傾向が活発化しているという。
「ステーブルコイン保有者がCEXから離れているという取引所の昨年からの懸念は、その可能性が高い」とライダー氏。また、2023年に入ってからマーケットメーカーもステーブルコインの流動性を減らしていると続けた。
個別の取引所を見ると、状況がよく理解できる。先週、コインベース(Coinbase)のステーブルコインの保有残高は4億1100万ドル、53%減少した。ビットフィネックス(Bitfinex)では1億7300万ドル、57%減少した。
最も減少したのは、バイナンス。過去7日間で15億ドル減少した。だが、この額が8%減少に過ぎないことはバイナンスの規模を表してもいる。
こうしたステーブルコインの一部はDEX(分散型取引所)に行き着いていると語るのは、STORM Partnersのマネージングディレクター、シェラーズ・アーメド(Sheraz Ahmed)氏。「この傾向はステーブルコインだけにとどまらない。CEXからDEXへの全体的な動きがある」と続けた。
バイナンスはこの数カ月、バイナンスUSDを積極的にアピールしていた。だがこの1週間で20億ドル以上のバイナンスUSDが引き出されて焼却(永久に流通させないこと)されている。発行元のパクソスだけでも7億ドルのバイナンスUSDを焼却している。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
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|原文:BUSD Drama Sets Stage for Stablecoin Market Reshuffling