DEXへの期待は「早すぎた」か──コインベースの取引高、年初からユニスワップを上回る

暗号資産(仮想通貨)取引大手コインベース(Coinbase)の取引高は2023年現時点、データ企業カイコ(Kaiko)によると、人気のDEX(分散型取引所)ユニスワップ(Uniswap)を上回っている。

2月28日、コインベースの取引高は1850億ドル超、ユニスワップの930億ドルの約2倍。2022年は、ほぼ同程度の時期もあった。

劣悪なUX

昨年のFTXをはじめとする中央集権型企業の崩壊を受けて、市場関係者はDEXに移行するトレーダーが増えると予想していた。2022年のある時点では、実際に移行が起きているように思えた。だがDEXには課題があるようだ。

DefiLlamaによると、DEXの2022年11月の取引高は1130億ドルに急増し、5月以来の高水準となっていた。

(kaiko)

カイコのリサーチアナリスト、コナー・ライダー(Conor Ryder)氏は、中央集権型取引所(CEX)は平均的な投資家を取り込む重要な役割を果たしており、DEXへの移行を求める声は「少し早すぎた」ようだと述べた。

「おそらく平均的な投資家は、一部のDEXを劣悪なユーザーエクスペリエンス(UX)のために敬遠しているのでしょう。それに比べて、CEXのUXはわかりやすい。好むと好まざるとにかかわらず、CEXは常に取引所分野の重要なパートとなっていると思う」(ライダー氏)

イーサリアムの新規アドレス数も低迷

ブロックチェーン分析企業IntoTheBlockのリサーチ責任者ルーカス・アウトミュロ(Lucas Outumuro)氏は、FTX破綻後、ノンカストディアル取引とDeFi(分散型金融)の需要が急増した状態は「衰えてしまった」と述べた。

アウトミュロ氏は、DEXでは取引高だけでなく、1日あたりの新規イーサリアムアドレス数が低迷していることを強調した。

IntoTheBlockのデータによると、1日あたりの新規イーサリアムアドレス数は11月24日に約22万8000に達し、2021年5月以来の高水準を記録したが、最近では9万弱まで減少している。

(IntoTheBlock)

「コインベースを使い始めることは、他のテクノロジープラットフォームや金融プラットフォームを使うことにかなり似ている。だがユニスワップを使うことはまったく異なるフロー。新しいユーザーは威圧的に感じるかもしれないので、普及には少し時間がかかりる」(アウトミュロ氏)

米銀大手JPモルガン・チェースのアナリストは11月、顧客向け文書にDEXの取引速度の遅さ、資産プール、注文のトレーサビリティ機能は、機関投資家の参入を妨げる可能性が高いと記した。

アナリストはまた、DEXには指値注文(リミットオーダー)/逆指値注文(ストップロスオーダー)機能がないこと、中央集権型取引所からデータを入手する価格オラクルに依存していること、ハッキングに対する脆弱性、過剰担保の必要性、自動清算の連鎖がもたらすシステミックリスクなどを広範な普及を妨げる要因としてあげていた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Kaiko
|原文:Coinbase Trade Volume Surpasses Uniswap’s, Countering Expectations for a DEX Surge