収益性の高い新たな投資対象を見つけることは、すべての投資家が直面する終わりなき作業だ。ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)は暗号資産にまつわる話題を独占しているが、投資家にとってのチャンスははるかに広がっている。
レイヤー2の役割
そうしたチャンスの一部は、ビットコインブロックチェーンやイーサリアムブロックチェーンの機能を拡張する必要性から生まれており、本質的にそれらとつながっている。ビットコインブロックチェーンやイーサリアムブロックチェーンはレイヤー1(L1)と呼ばれ、レイヤー1を拡張(スケーリング)するものはレイヤー2(L2)と呼ばれる。
レイヤー1の価値は、情報やスマートコントラクトが格納されるブロックチェーン上の領域「ブロックスペース」に由来する。BTC、ETHなどのレイヤー1トークンは需要に応じて価値が決まる。言ってみれば、ダンスのチケットのようなもので、行きたい人が多いほど価格は上昇する。価格が上がることを見越して買っておくことが購入の理由の1つとなる。
ビットコインはピア・ツー・ピア(P2P)取引を可能にする。BTC価格は、それに対する需要に応じて上がる。イーサリアムや同様のレイヤー1はスマートコントラクトや分散型金融(DeFi)、さらに将来は今は想像できないようなことを実現するだろう。ETHなどは、その需要で価格が動く。
ブロックスペースは希少だ。スマートコントラクトを実現するレイヤー1としては最も大規模なイーサリアムも、金融の世界に存在するすべての取引を扱うことはできない。1秒に処理できる取引数は数十と、VISAやニューヨーク証券取引所には桁違いで及ばない。これが、DeFiが従来の金融をリプレースすることに向けた大きなハードルとなっている。
つまり、レイヤー1ブロックチェーンが皆が入りたがっている部屋だとすると、ドアの前には長い行列ができ、入場料が高騰してしまうということだ。
新しいインフラ
そこで、レイヤー2の出番だ。レイヤー2は、イベントにおけるサブ会場のような役割を果たす。メイン会場に入れない場合に備えた、スピーチの映像が見られる大型スクリーンがあり、参加者と交流もできる予備の部屋だ。
レイヤー2はレイヤー1の負担を肩代わりし、より速く、安価に取引を処理するが、本質的にはレイヤー1と連携しており、処理した取引をレイヤー1に送る。レイヤー2は幅広いアクセスと混雑緩和を可能にする。
イーサリアムブロックチェーンの場合、よく知られたレイヤー2は、ポリゴン(Polygon)、アービトラム(Arbitrum)、オプティミズム(Optimism)などだ。ビットコインブロックチェーンでは、スタックス(Stacks)が知られている。
レイヤー1と同じように、レイヤー2も通常、独自のネイティブトークンを備えており、ネットワークを使用してもらうインセンティブとして機能する。
投資家として私はレイヤー2への投資を開発者が新しい、便利なものを開発するスペースを提供するインフラへの投資と考えている。便利なものがどんなものかはまだわからないが、開発のためにはより多くの入口やスペースが必要なことはわかる。新しいインフラをもたらすものに投資したいと考えている。
主要レイヤー2
代表的なレイヤー2を見ていこう。
ポリゴン(Polygon)
ポリゴンは、多くの人にとって最初に思い浮かぶレイヤー2だろう。スケーリングシステムとして機能するポリゴンは、開発者がイーサリアム上で分散型アプリケーションを開発できるようにする。
イーサリアムが1秒間に処理できる取引数が30件なのに対して、ポリゴンは約6万5000件とはるかに処理速度が速い。JPモルガンは昨年、ポリゴンを使ってDeFi取引を行って話題を集めた。
ネイティブトークンのMATICは現在、時価総額98億ドル、年初から48%上昇している(当記事執筆時点、以下同)。
イミュータブルX(Immutable X)
イミュータブルXは、NFT向けのスケーリングシステムとして機能し、ガス代(取引手数料)の高さと処理速度の遅さの解決を目指している。
ネイティブトークンのIMXは時価総額ではMATICにはるかに及ばず、8億8000万ドル。差がこれだけ開いていることは、MATICのマーケットシェアの大きさによるもの。IMXは年初から173%上昇している。
スタックス(Stacks)
スタックスはこの数カ月で、かなり話題となった。ポリゴンとイミュータブルXがイーサリアムブロックチェーンのスケーリングソリューションであるのに対し、スタックスはビットコインブロックチェーン向けで、Ordinalsと呼ばれるNFT発行を可能にしている。
スタックスはビットコインを単なるピア・ツー・ピア取引を超えたものに拡張し、暗号資産コミュニティの注目を集めている。ネイティブトークンのSTXは、時価総額10億ドルを超え、年初から254%上昇と、他の暗号資産をリードしている。
レイヤー2はまだほかにも数多い。オプティミズムやループリング(Loopring)などが、暗号資産エコシステムにおいて有用性を高めるために設計・構築されている。
レイヤー2の成功や失敗は、長い時間をかけて見極めるべきものだ。しかし、レイヤー2がもたらす影響、チャンス、アクセスは、すべての人が考えるべきものだ。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Long & Short: Why Layer 2 Protocols Matter