米当局が3月7日、ダークウェブのハッキング事件で回収した10億ドル(約1360億円)相当のビットコイン(BTC)を、コインベース(Coinbase)が所有するものを含む新しいウォレットに送金したことで、大きな売り圧力がビットコイン価格を押し下げるのではないかとの不安が広がった。
ブロックチェーンセキュリティ企業PeckShieldによると、米当局は3回の取引でビットコインを移動させた。約1万BTCはコインベースが管理するウォレットに、約4万1000ドル(約560億円)相当のビットコインは政府が管理するウォレットに送られた。
PeckShieldは8日早朝にこの動きをツイッターに投稿。投資家は、米当局が回収したビットコインを売却することで、ビットコイン価格が下落する恐れがあるとの懸念を表明、ビットコインは約2%下落して、一時2万2000ドルを割った。
米当局はこれまで、押収したデジタル資産を公開市場で売却していない。米政府は通常、押収した資産をオークションで売却している。2014年と2015年、政府はブラックマーケット「シルクロード」の所有者から押収したビットコインを競売にかけた。
ビットコインが公開市場で売却されることへの懸念は大げさかもしれないが、価格が打撃を受けるかもしれないとの懸念は不当なものではないと暗号資産市場分析企業Kaikoのリサーチャー、ライダー(Conor Ryder)氏は語った。
「シルクロードから押収したビットコインをコインベースに移動させたことは、ほぼ間違いなく売却する意図で行われており、ビットコインが短期的に逆風にさらされるのではないかと考えざるを得ない」(ライダー氏)
市場がこの圧力を吸収できるかどうかは、市場の構成に帰結する可能性が高いと語ったのは、デジタル資産運用会社3iqのリサーチ責任者マーク・コナーズ(Mark Connors)氏。つまり、誰が、どれだけの暗号資産を保有しているかが、市場を動かす可能性のある出来事に対して市場がどの程度反応するかに大きく影響する。
コナーズ氏によれば、ビットコイン市場の現在の構成は、昨年春のテラ(Terra)崩壊による下落の時よりも売り圧力に耐えられる可能性が高いという。昨年よりも市場のレバレッジが小さくなっているためだ。
また、現在の市場は、1000ドル以上のビットコインを保有する投資家(いわゆる、クジラ)が、大量の個人投資家が押し寄せた昨年よりも多くなっている。
「売り圧力があったとしても、すぐに反発するはず。(保有高の小さな)個人投資家と大きなレバレッジに特徴づけられた1年前の市場と比較して、現在の市場には大きな押し目が存在する」(コナーズ氏)
とはいえ、米当局の動きによってビットコイン価格はまだ動くかもしれない。押収したビットコインに関する政府の計画は、まだ不明な点が多い。ビットコインを競売にかけるのかどうか、分割して動かしたビットコインをまとめるのかどうかも依然として不明だ。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:U.S. Government’s $1B Bitcoin Transfer Spooks Investors, Bitcoin Dips