ビットコインにとって、これ以上ないほど面白い時期がきた。
人気NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club」を手がける評価額40億ドル(約5400億円)のユガラボ(Yuga Labs)は、ビットコインブロックチェーンのOrdinalsプロトコルを利用したNFTの初のオークションで1650万ドル(約22億円)の利益をあげた。
「TweleveFold」と名付けられた288個のNFTからなるコレクションは暗号資産コミュニティに衝撃を与えた。
ユガラボがプロジェクトローンチの発表をしたのは2月末。ユガラボはNFTではビッグネームであり、現在最も価値の高いNFTコレクショントップ10のうち3つを手がけてる。知的財産権を所有するNFTの数は、さらに多い。
これまでユガラボは、NFTの大半が存在するイーサリアムブロックチェーン以外でNFTを発行したことはない。暗号資産業界でも最大級の企業がビットコインに対して大きな賭けに出た。
開発は低迷期に活発化
興味深いことに、ビットコインブロックチェーンでの開発は、現在の暗号資産市場低迷期の中で活発化している。最近のニュースを見ただけでも、ビットコインでZK(ゼロ知識)ロールアップを配備する議論が登場し、Ordinalsプロジェクトは勢いを保ち、ビットコイン・ライトニングを使う話題の分散型ソーシャルメディアプロトコルNostrもユーザー数を伸ばしている。
こうしたトレンドは、どこから始まったのだろう? 長年、人々はビットコイン(BTC)を理由はわからないが、ある人たちにとっては価値があるものとみなしてきた。これはビットコインが悪いわけではなく、その慎重な設計と管理のおかげだ。ビットコインは安定した通貨として機能することを期待されており、その役割を見事に果たしてきた。しかし同時に人々や企業は、ビットコインはもっと大きな役割を果たせるのではないか、と考え続けてきた。
ビットコインブロックチェーン上のNFTは、カウンターパーティー(Counterparty)というプロトコルで始まったが、前回の強気相場の時には人気がなかった。ビットコインブロックチェーンはスマートコントラクト・フレンドリーではないからだ。ビットコインブロックチェーンでの開発は、分散型アプリケーションを実行するために作られたブロックチェーンでの開発よりも手間がかかる。
Ordinalsプロジェクトは、「タップルート(Taproot)」と呼ばれる2021年のビットコインアップグレードを活用、実際のブロックチェーンにNFTを格納できる。
イーサリアムからの鞍替えが進む?
いわゆる「ビットコインNFT」は、IPFSなどの外部サーバーにデータを保存する必要のある場合が多いイーサリアムブロックチェーンのNFTとは大きく異なっており、より優れている可能性がある。
イーサリアムNFTは変更不可能なトークンだが、変更可能なデータとリンクしている。OrdinalsはNFTの保存をより安全にする。なぜならビットコインブロックチェーンに永遠に保存されるから。多くの人気NFTがユガラボに続いて、ビットコインブロックチェーンでプロジェクトを展開する可能性がある。
実際、Ordinals開発者のケイシー・ロダモア(Casey Rodarmor)氏は、イーサリアムブロックチェーンのNFTを破壊し、それをビットコインブロックチェーンに格納、再展開することを可能にするバーンアドレスを作成した。人々や企業がイーサリアムやソラナなどを完全に放棄して、ビットコインに鞍替えするかどうかはわからないが、ビットコインにとって新しい時代が始まったことは否定できない。単に保有されるだけではなく、ますます多くのビットコインが使われることになる。
ユガラボがOrdinalsを採用したことは、まさにすでに始まっていた動きを加速させた。例えば、ビットコインエコシステムの開発を手がけるスタートアップのトラスト・マシーンズ(Trust Machies)は昨年、1億5000万ドル(約200億円)を調達した。
カウンターパーティー、リキッド(Liquid)、スタックス(Stacks)、RSK、ライトニングなどは長年にわたって、人々がビットコインを使うことのできる安定したインフラを開発し続けてきた。
明るい未来
もちろん、これらのプロジェクトの多くはさまざまなレベルの懐疑的な意見にさらされてきた。これはOrdinalsに対する好意的な意見と否定的な反応に集約されている。
一方には、ビットコインは開発の試験場や軽薄なプロジェクトをテストする場になるべきではないと考える人たちが多くいる。他方には、OrdinalsやNostrなどは、ビットコイン普及に向けた新たなステップと考える人たちがいる。
オンラインのビットコインコミュニティは今、岐路に立たされている。Ordinalsはすぐに消えたりしないからだ。多くの人がビットコインブロックチェーンで開発したがっており、オープンソースだからこそ、それが可能だ。グラスノード(Glassnode)によれば、Ordinalsによって、残高がゼロではないビットコインアドレスが過去最高の4400万に達したという、否定することのできないデータがある。
ビットコインの未来は時間が経てば明らかになってくるだろう。ユガラボがビットコインに進出したことは、その未来が明るいこと、そしてこのエキサイティングでダイナミックな業界にはまだまだ探求するものが数多く存在していることのサインだ。
オーブリー・ストローベル(Aubrey Strobel)氏:ポッドキャスト『The Aubservation』のホストで、ビットコイン報酬企業Lolliの元コミュニケーション責任者。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Ordinals Protocol
|原文:Why Yuga Labs’ Embrace of Bitcoin NFTs Is a Big Deal