価格こそがビットコイン成功の真の指標【コラム】

効率的市場仮説、すなわち市場価格にはすべての情報が反映されていると仮定することについては、意見が割れている。

多くの投資アドバイザーは市場は効率的であり、市場をただ所有すればよいと言う。つまり、個々の銘柄を選ぶのではなく、分散投資あるいはパッシブ・ファンド(株価や債券のインデックスに連動するような運用を目指すファンド)を勧める。資産価格はその価値を反映しており、それゆえ価格は正しいと多くの投資アドバイザーは信じている。

一方、市場は非効率的と考える人もいる。彼らは、すべての従業員退職金口座は株式と債券の組み合わせ以外の選択肢がなく、参加者を閉じ込めていると考えがちだ。彼らは市場内のさまざまな分野を指摘する。例えば、2022年のエネルギー分野が絶好の例だ。現状、エネルギー分野は大規模なインデックスに占める割合がきわめて小さい。このように資産価格はしばしば、本来の価値を反映せず、不正確なことが多いというのが市場は非効率と考える人たちの見解だ。

しかし支配的な意見は、市場は完全に効率的ではないが、年々近づいているというものだ。

ではなぜ、多くの投資専門家たちはビットコインを同じような市場効率性の視点で見ることができないのだろうか?

彼らはビットコインは詐欺やバブルと主張する。だが、ビットコインの市場価値は2019年以来、安定して上昇しており、長年にわたってベストパフォーマンスをあげる資産となっている。

専門家たちは、その理由を自問すべきときだ。

価格 = 真実

市場の効率性を唱えつつ、ビットコインを詐欺と呼ぶ専門家は自己矛盾している。

効率的市場仮説において、株価は価値の優れた指標だと言うなら、同じことがビットコインにも当てはまるはずだ。

市場の効率性を信じているとしたら、価格は真実だ。資産価値が維持される、あるいは成長する期間が長いほど価値があるという証拠は強くなる。市場参加者の一部、あるいは全員が合意するかどうかは無関係だ。

ビットコイン価格は、安定したグローバルで自由な通貨に対する需要を反映する。市場は24時間365日動いており、市場参加者は全員、ビットコインの仕組みについて同じ情報を得ることができる。

マイニングハッシュレートが史上最高を記録していることも、デイリーアクティブアドレス数も、チェーン上での24時間の取引高も、誰でも確認できる。これらのデータはすべて、明確なパターンを描いている。つまり、14年間、右肩上がりで成長し続けている。

ビットコインは短期間では、激しく変動するだろうか?

それは確かだが、ROI(投資利益率)やCAGR(年平均成長率)といった観点からも、ビットコインは他の資産より大いに優位に立っている。

長期的な視点で見れば、もし市場が何かを価値がないと判断すれば、合意された価格に落ち着くか、価値はゼロになってしまう。暗号資産市場ではこれがしばしば起こる。最近では、FTTやLUNAがその例だ。ドットコムバブルで倒産したpet.comなど、大いなる敗者として歴史に名前を刻んだ企業のことも忘れないでおこう。

投資専門家の多くは、ビットコインは歴史が浅く、価格を長期間保持できると証明できないと主張する過ちも繰り返している。

しかし、2022年末時点、ビットコインブロックチェーンはS&P500よりも長時間取引を行った。ビットコインの取引時間は11万224時間、一方のS&P500は10万7217時間。

S&P500は1959年から存在しており、歴史があると反論する人もいるだろう。しかしその歴史のほとんどはインターネット以前の歴史であり、インターネット登場以降、世界は変わったと私なら反論する。さらにビットコインは第三者に依存したり、サーキットブレーカー(取引の一時停止措置)を使うことなく、より堅固で制限されない市場となっている。

内在的価値という嘘

ビットコイン価格が反映していないものが1つある。それは、内在的価値だ。多くの専門家がこの点を持ち出すだろう。

だが私が聞きたいことは、内在的価値とは何か、ということだ。

そんなものは存在しない。価値は常に、その時の個人のニーズに基づいた主観的なものだ。需要がすべてを動かす。これまでも常にそうだった。

内在的価値という考えは無駄だ。ロールスロイスがペットボトルの水より価値が高いかどうかは、どこにいるか、何が必要かによって変わる主観的な問題だ。砂漠では、水の需要はロールスロイスの需要よりも高いだろう。これは極端な例だが、需要が価値を牽引する。それは時間が経っても変わらない。

内在的価値の議論を却下すべきもう1つの理由は、ビットコインがベースマネーだからだ。何にも裏付けられていない、純粋な通貨資産だ。資産が「何か他のもの」によって裏付けられるべきは、最も重要と思われる性質を欠いている場合のみだ。

投資リサーチサービスを提供するリン・アルデン(Lyn Alden)氏は著書『3 Reasons I’m Investing in Bitcoin(私がビットコインに投資する3つの理由)』の中で「工業的な用途はないが、(ビットコインは)希少で丈夫、携帯可能で分割可能、検証可能、保管可能、交換可能、売却可能で、国境を超えて認められており、通貨の特性を備えている。しかし、すべての『潜在的』通貨と同じように、価値を保つためには需要が持続する必要がある」と説明している。

価値がゼロのところから、グローバルな通貨へと自力で成長することは、あらゆるテクノロジーにとって最も偉大な業績の1つだ。ビットコイン価格は需要と普及を反映している。それ以上でも以下でもない。私たちはビットコインの通貨化の時代を生きており、その道は波瀾万丈で、直線的とはほど遠い。

元グーグルのエンジニアでビットコイナーのビジェイ・ボヤパティ(Vijay Boyapati)氏は著書『The Bullish Case for Bitcoin(ビットコインに強気になる根拠)』の中で「今生きている人の中で、(ビットコインで起こっているような)モノのリアルタイムでの通貨化を目撃したことがある人はいない。そのため、この通貨化の道は貴重な体験だ」と書いている。

唯一の誤った選択

大半の投資専門家はそれでも、ビットコインをポートフォリオに含める必要性を認めないだろう。木を見て森を見ず、だ。

アメリカはおそらく、より優れた通貨を最も必要としていない国だろう。ド・ゴール元フランス大統領が1965年に述べたように、ドルが世界の準備通貨となっていることで、アメリカは「exorbitant privilege(法外な特権)」を享受し、悪貨にさほど影響されずに済んできた。

しかし大半の投資家にとって、ビットコインの投資結果は非対称的で、失敗したとしても痛手にはならず、上手くいけばライフスタイルを維持するための救命ボートとなる。適切に投資を分配することが、この先10年で重要になる。

多くの投資専門家はエゴが強過ぎて、完全なコンセンサスが形成されるまではビットコインを勧めることはできないだろう。しかしその頃には、非対称性は失われてしまうだろう。

だがビットコイン保有が悪になることは決してない。2023年に行える唯一の誤った選択は、ビットコインにまったく投資しないことだ。

ビットコイン価格は今、何を語っているだろうか? 次の半減期が到来し、10万ドル台に達したビットコイン価格に皆が熱狂する前に、自分でリサーチをするときだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Price, Not Intrinsic Value, Is the True Measure of Bitcoin’s Success