ビットコイン上昇は「インフレヘッジ」説を裏付けるか?【コラム】

ビットコイン(BTC)は大幅な上昇を見せ、3月11日から40%近く上昇している。イーサリアム(ETH)をはじめ、ほぼすべてのアルトコインを上回るパフォーマンスだ。

これはビットコインの「インフレヘッジ」説を裏付けるものだと主張する人たちもいる。わずか9カ月前には、完全に廃れたとまでは言わないが、ほぼ説得力をなくした主張だった。

ビットコインはインフレがピークを迎える中で下落。しかし今頃になって初めて、金融システムに対するインフレの真の影響が出てきており、ビットコインがついに反応しているというわけだ。

消費者の購買力の衰えではなく、システミックなカオスに対して、ビットコインは「ヘッジ」となっている。ビットコインはドルのインフレに反応して整然と動くというアイデアは、いつも真の主張を単純化したものに過ぎなかった。

そもそもそうしたメカニズムが機能するには、ビットコインがより広く普及している必要がある。ビットコインがインフレに直線的に反応するには、現状、投機の要素が織り込まれ過ぎている。

しかしそれ以外にも、インフレへッジの主張のより細かなバージョンでは、ビットコインがヘッジとなれる真のリスクは、預金を預かる銀行の閉鎖など、金融危機の構造的カオスということになる。現在進行しているとおり、金融危機は利上げなどの中央銀行の施策とより密接に結び付いている。

間違った解釈の可能性

しかし、ビットコインの価格シグナルを間違って解釈している可能性がある。インフレの長期的インパクトによって上昇しているのではなく、市場が反対のことを考えているから上昇しているのかもしれない。つまり、中央銀行による利上げの終了または一時停止の可能性だ。これは、あらゆるリスク資産にとって復活のサインとなる。

実際、ビットコイン上昇の最も急激な部分は、シリコンバレー銀行が救済されると発表された3月13日以降に起きた。

シリコンバレー銀行は、長期的に金利が上がることを前提に投資を行い、ダメージを受けた。そして銀行の破綻は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げに対する赤信号を生み出している。

「ヘッジファンドの多くは、インフレ基調の金融引き締め政策の継続を想定していた」とUnlimited Fundsのボブ・エリオット(Bob Elliot)氏は語る。

「銀行危機によるデフレリスクは、ファンダメンタルと市場の動きを急速に変え、ファンドの多くは誤ったポジションに陥ってしまった」

そうした動きが、ビットコイン上昇を後押ししたのかもしれない。1週間で3つの銀行が破綻した後、FRBは利上げを停止、あるいは利下げさえするかもしれないと市場は考えており、新たなリスク資産ブームにつながっているのかもしれない。それが銀行について不安を持つ人たちによるビットコインへのシフトに重なっただけかもしれない。

ビットコインの真価

この点は今週、さらに明確になるだろう。FOMC(米連邦公開市場委員会)の会合はアメリカ時間21日に開かれ、22日には利上げを発表すると予想されている。しかしFOMCがさらなる金融危機の恐れが高いと判断すれば、利上げは停止されるかもしれない。

だがインフレ率はまだ6%もあり、個人的には利上げが続く可能性が高いと考えている。0.25%の利上げかもしれないが、利上げなしとはならないだろう。

万一、利上げなしとなれば、市場はそれを安価な資金流入が再び始まるサインと解釈する可能性がある。FRBが何としてもインフレと戦うという決意を新たにしても、ビットコインはリスク資産として大幅に上昇するかもしれない。

ビットコインの「インフレヘッジ」が本当に試されるのは、金利とは直接関係ない状態で、銀行のさらなるトラブルがビットコインのさらなる上昇をもたらすかどうかだ。それまでは、すべては憶測に過ぎない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:FRB外観(Helene Braun/CoinDesk)
|原文:Does Bitcoin’s Rally Vindicate the ‘Inflation Hedge’ Thesis – or Is Risk Back on the Menu?