ビットコイン(BTC)は、1年間の急降下から反転し、勢いよく2023年をスタートしている。
米CoinDeskのデータによると、この時価総額トップの暗号資産(仮想通貨)は今年に入って約72%増の2万8500ドルとなり、四半期ベースで過去2年間の最高上昇率を記録した。この価格上昇により、暗号資産の市場価値は5420億ドル(約71兆4600億円)にまで上昇した。
わずか3カ月前には、ビットコインの評価額が2021年11月以降76%も下落したことから、一部の専門家は今四半期に1万2000ドルにまで下落することも考えていた。
この反発により、ビットコインは時価総額2位の暗号資産のイーサリアム(ETH)を上回り、四半期ベースで50%以上の上昇が見込まれている。一方、ゴールドは約7%、ウォール街のハイテク株の指数であるナスダック総合指数は約15%の上昇だ。
これは、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)などの各国中央銀行が景気後退のシグナルを受けて積極的な利上げを断念するとの予想に後押しされたものだと考えられている。
3月初め、アメリカの3つの銀行が破綻し、FRBが銀行セクターのパニックを阻止するために緊急資金供給プログラムを開始したことから、FRBの方針転換への期待は高まった。中央銀行のバランスシートは最近3000億ドル(約39兆5400億円)拡大し、数カ月にわたる量的引き締めが解消された。フェドファンド先物によると、トレーダーはFRBが6月に0.25%の利下げを行い、緩和サイクルを開始すると見ているようだ。
MarketVector Indexesのデジタル資産プロダクトスペシャリストのマーティン・ラインウェバー(Martin Leinweber)氏は、CoinDesk TVに「中央銀行、特にFRBによる緩和策への期待がすべてだ」と述べた。「すべてのリスク資産の中で、ビットコインは流動性の揺れに対して最も敏感だ」。
Bitcoin Opportunity Fundのマネージングパートナーであるデビッド・フォーリー(David Foley)氏は、ビットコインやゴールドのような健全な魅力を持つ貨幣資産は、流動性注入の恩恵を受けていると述べている。
「FRBが突然、方針を転換し、銀行システムを保護するために量的緩和に戻さなければならなくなったため、ゴールドやシルバーなどの健全な貨幣資産に資金が流れ込む。ビットコインは健全な貨幣と言えるため、このレースでは最速になるだろう」とフォーリー氏はCoinDesk TVで量的緩和について指摘した。
ビットコインのオーダーブック・デプスの悪化が、価格高騰に大きな役割を果たしたとする見方もある。
オーダーブック・デプスは、安定した価格での大口の取引がどれだけ容易かを意味する。FTXの破綻以降、デプスは着実に減少し、3月上旬には10カ月ぶりの低水準に達した。言い換えれば、今では小さな買い注文が価格に与える影響が大きくなっている。
「今回は、金融危機に対するヘッジであるというストーリーがビットコインを後押しした。しかし、乗り越えるべき上値抵抗はほとんどなかった」とパリに拠点を置く暗号資産データ企業カイコ(Kaiko)のアナリスト、コナー・ライダー(Connor Ryder)氏は最近発表された分析記事で述べている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:CoinDesk/Highcharts.com
|原文:Bitcoin Heads for Best Quarter in Two Years, Outperforms Ether, Gold, Nasdaq