多くのブランドやクリエイターがWeb3に参入しているが、新規ユーザーをオンボード(参加)させ、マスへの普及を進めるには、ユーザーエクスペリエンス(UX)がボトルネックになっている──。
「(オンボーディング)プロセスで求められるクリックのたびに、50%の人を失うことになる」と飲料大手アンハイザー・ブッシュ・インベブのWeb3責任者ジュリー・ガルノー(Julie Garneau)氏は「Consensus 2023」のパネルディスカッション「The Opportunities and Roadblocks of Mass Adoption(
マスアダプションの機会と障害)」で述べた。
「オンランプは非常に重要、改善するためには技術者の助けが必要だ」(ガルノー氏)
スターバックスなどの企業をサポートしているWeb3ロイヤリティスタートアップ、Forum3の共同CEOアンディ・サック(Andy Sack)氏は、特典や体験のためにウォレットをセットアップし、セキュリティを確保することは「消費者にとって異質なもの」と捉えている。
セキュリティとガバナンス
その一方で、暗号資産関連企業とWeb2ブランドは、Web2とWeb3の間のギャップを埋め、マスアダプションを推進する取り組みを進めている。
50人を超えるWeb3クリエイターと契約しているタレントエージェンシーWMEの戦略責任者クリス・ジャクミン(Chris Jacquemin)氏は、ソーシャルメディアを通してさまざまなコミュニティを探す際、「Web3内の発言力のある少数派は文字どおり、信頼を確立するための基盤となる」と語った。
ブランドは「今はまだ存在していない人たちとパートナシップとリレーションシップのバランスをどのように取るかを考える必要がある。Web3は永遠に存在するため、それらは不可欠になる」(ジャクミン氏)
ハードウェアウォレットを手がけるレジャー(Ledger)のコミュニケーション担当バイスプレジデント、アリエル・ウェングロフ(Ariel Wengroff)氏は、Web3は(ブランドに)興味を持ったユーザーとの継続的なリレーションシップと、リレーションシップに対する説明責任をブランドが直接持つことができる初めてのチャンスと考えている。
「クリエイターやブランドは現在のソーシャルコミュニティに絶対的な恐怖を感じているはず。なぜなら、コミュニティを実際にコントロールすることはできないから」「そこに誰がいるのかわからない。コミュニティを持っていると言っているブランドは嘘をついている」(ウェングロフ氏)
今後、ユーザーが定期的に購入する製品の記録を取るようなブランドにとっては「エンタープライズレベルのセキュリティ」と「ガバナンス」は不可欠とウェングロフ氏は考えている。
AIにまつわる懸念
またパネリストたちは、人工知能(AI)はWeb3へのオンボーディングにプラスとマイナスの大きな影響を与えるだろうと述べた。「AIはWeb3の利用を促進する。AIはブロックチェーンの必要性を生み出すだろう」とForum3のサック氏は指摘。
さらに「AIとその進化の速度、ディープフェイク、メタバースにおけるリアリティの破壊、あるいはリアリティを操作する能力は、信頼システムを必要とすることになる。そして、自分のアイデンティティを証明するための暗号をベースにしたシステムも必要になる」と続けた。
AIがユーザーをオンボーディングさせる方法についての懸念はパネリストに一致していた。「AIの活用はスムーズだとは思っていない。不安定なものになるだろう」とサック氏は語った。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock/CoinDesk
|原文:Technology Is Blocking Mass Adoption of Web3