ビットコインマイナー、将来は自らの手で切り拓く

ビットコイン(BTC)マイニング難易度がまだ数十億という数値で(現在は約50兆)、これからマイニングできるビットコインが流通している数と同じくらい残っていて、身近に手に入るような機器(GPU)と一般向けの電力料金で収益性の高いマイニング事業を運営でき、規制当局の取り締まりの心配もほとんどなかった頃のことを覚えているだろうか?

10年も経っていないのに、もう遠い昔の話のような感じがする。

今では、コストから競争、政治家からの監視、気候変動活動家からの怒りまで、ビットコインマイニングに関するあらゆる側面が一段と厳しいものになっている。

しかし、金融に革命を起こすマイニング業界が新しい環境に適応できれば、良い時代がまたやって来るかもしれない。そのためには、異なるタイプのマイニングビジネスとリーダーが欠かせない。

これまでと大きく異なる現実の中でマイニングを続けていくという挑戦を決断するまでにあと数カ月の猶予がある。決断できれば、ビットコインマイニングの将来的な成功に向けて、重要な役割を果たすことができるだろう。

「半減期」という課題

「半減期」によって、マイニングできるビットコインの数は1日に約900から450に減少。ビットコインの希少性を高め、価値の保存手段としての性質を支えるデフレ圧力を加えることになる。

ビットコイン投資家がビットコインを保有しているのは、その価値が高まると考えているからであり、これまでの歴史が参考になるとすれば、来年の半減期はそのきっかけとなるかもしれない。ビットコインは過去に、半減期を前にした1年間で価格が上昇してきた。2020年5月11日の前回の半減期前の12カ月では19%上昇。その前の2016年の半減期までの12カ月では142%も上昇した。

約4年に1度の半減期はまだ1年も先だが、ビットコインはすでに、その影響を価格に織り込んでいるようだ。

ビットコインは、業界関係者の多くが願ったほど伝統的金融市場から切り離されてはおらず、現在の上昇は単に株式市場における一時的な安堵感を反映しているだけかもしれない。それでも、FTXにまつわる騒動と米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な利上げによる低迷から一時的に解放されるのは気分が良いものだ。

半減期を乗り越える方法

ビットコインの価値を高める可能性の高い半減期は同時に、マイニングの収益性を低下させることにもなる。マイニングできるビットコインが減ることは、利益も減るということだ。事業運営コストが上昇すれば、収益性に課題が出て、マイナーはコストと収益性のどちらからも苦しめられることになる。

かなりの数のビットコインを保有していたとしても、上昇後の価格と新しいコスト水準を考慮すると、マイニング企業はキャッシュフローの減少と利幅の縮小という環境に備えなければならない。クリーンなバランスシートを維持し、良好で効率的な事業を運営するマイナーと、短期的な利益のみのために最適化を図るマイナーの命運が分かれることになるだろう。

2022年下半期のビットコインの低迷は、あまりに多くの負債を抱えつつ高い成長を追い求めた企業の連鎖的破綻を引き起こしたが、似たような事態がまた起ころうとしている。マイナーはより多くのキャッシュを手元に用意し、事業を効率化し、慎重に行動することで、この先見込まれる混乱に備えなければならない。

良い時代の到来

マイナーは次なるサイクルにおける自らの命運をコントロールできる。資産を生み出す人たちは、力強いバランスシートを持つべきであるのみならず、過剰に拡大したり、不要なリスクを取りたくなる誘惑に勝たなければならない。

広範な経済は不透明感に包まれ、規制の先行きが読めないことから、市況がすぐに変わる可能性があり、保守的であり続けることが大切だ。マイナーはサイクルのピークではなく、中庸を目指して事業運営を行い、強気相場で成功し、弱気相場でも十分に生き残れるほどの柔軟性を確保するべきだ。

ビットコインマイナーは、Web3で起きている急速なイノベーションからインスピレーションを受け、マイニング以外に収入源を多様化させる方法を見つけることもできるだろう。

有害なマキシマリズムから自由になれば、例えば、イーサリアムネットワークは数多くのチャンスを提示してくれる。その一例がフライホイールモデル。マイニングで獲得したビットコインをイーサリアム(ETH)に替え、ステーキングして報酬を獲得できる。単純にライバルと考えるのではなく、ビットコインとイーサリアムは連携し、サイクルや規制当局の気まぐれに左右されにくい繁栄した未来を築くことができる。

将来的なリスクを回避し、効率的で機敏な運営を行い、収益源を多様化することで、マイナーは新しい環境に適応し、暗号資産コミュニティに欠かせない存在としてのポジションを確保することができる。

健全な業界を築き、それを維持する責任は私たちにある。マイナーは有害なマキシマリズムを捨て、悪人たちに責任を取らせ、私たちの事業がコミュニティと国にメリットをもたらすと示さなければならない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Crypto Miner Reckoning: No Fate but What We Make