取引所で保有されるステーブルコインが2年ぶりの低水準に──投資家がリスクを回避

中央集権的な暗号資産(仮想通貨)取引所と結びついたアドレスに保有されるステーブルコイン(ドルペッグされた暗号資産)の数が減少して、2021年5月以来の最低水準に達し、投資家のリスクに対する嫌悪感が高まっていることを示している。

グラスノード(Glassnode)のデータによると、5月1日の時点で残高は210億6000万ドル(約2兆9000億円)だった。グラスノードは、バイナンスUSD(BUSD)、ジェミニドル(GUSD)、HSUD、ダイ(DAI)、パクソス(USDP)、EURS、サイ(SAI)、sUSD、テザー(USDT)、USDコイン(USDC)の取引所残高を追跡している。

12月中旬に440億ドル(約6兆円)以上の過去最高と比較して半分以下に減少している。2月の取引所パクソス(Paxos)のBUSD発行に対するアメリカの規制当局の取り締まりと、それに続く3月のUSDCの乱高下を受けて、下落の勢いは増している。

取引所のウォレットに保有されているドルペッグされた暗号資産が、2021年5月以来の低水準に急落している。(グラスノード)

「パクソスが規制当局からBUSDの発行停止を言い渡され、最近USDCがデペッグしたことを受けて、ステーブルコインのリスクを回避する動きが反映されている。BUSDとUSDCの時価総額は着実に減少している」とクオンツ主導の取引会社TDX Strategiesの創設者兼CEOのディック・ロー(Dick Lo)氏は述べた。

パクソスは規制当局の命令に従って、2月にステーブルコインBUSDの発行を停止した。世界第2位のステーブルコインであるUSDCは、発行元のサークル(Circle)が当時危機的状況にあったシリコンバレー銀行に預金していることが明らかになったため、3月に価格が乱高下した。

取引所残高が減少する中、時価総額で世界最大のステーブルコインであるテザー(USDT)が支配的になり、BUSDとUSDCは劣勢に立たされている。

新規資金の流入が不足している

投資家は、過去3年間、暗号資産の購入資金として、他のトークンのような価格変動を回避できるステーブルコインを好むようになっていた。

ビットコイン(BTC)価格の上昇と同時に減少するステーブルコインの残高は、ステーブルコインからBTCへの資金展開が今年の暗号資産の70%上昇の主な要因であり、市場には新しい資金が流入していない状態であることを示唆している。

昨年、インフレ抑制を目的としたアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な利上げにより、米ドルやドルベッグされたコインの魅力が高まったため、投資家はステーブルコインに資金を移動した。しかし、金融緩和の再開が予想され始めた昨年末以降、米ドルを保有する動機は弱まっている。

暗号資産オプションに焦点を当てたテック企業であるSignalPlusは、毎日発行しているマーケットレポートで「CeFi(中央集権型)取引所におけるステーブルコインの残高は、エコシステムに新たに追加される資本がほとんどないため、減少し続けている」と述べている。

「さらに、DeFi、NFT、GameFiのユーザー活動は、スポット価格の回復にもかかわらず、大きく落ち込んでおり、近い将来の暗号資産価格に対する慎重な見方を強めている」とSignalPlusは付け加えている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Glassnode
|原文:Number of Stablecoins Held on Exchanges Slips to 2-Year Low