ジェーン・ストリート(Jane Street)、ジャンプ・クリプト(Jump Crypto)という影響力の大きな暗号資産(仮想通貨)マーケットメーカー2社の撤退、あるいは業務縮小は、業界の脆弱な流動性を損なう可能性がある──。カイコ(Kaiko)のアナリストがCoinDeskに語った。
昨年11月のFTX破綻に端を発した規制強化のなか、2社はアメリカでの暗号資産取引を縮小しているとブルームバーグが5月9日に伝えた。ジャンプ・クリプトの暗号資産部門はグローバルでは拡大を続け、ジェーン・ストリートは成長計画を縮小するという。
「このニュースは、最近の動向を考えると必ずしも驚くようなことではない」とカイコのアナリスト、リヤド・キャリー(Riyad Carey)氏はCoinDeskに語った。
「懸念は、アラメダ(Alameda)の破綻から、流動性がまだ回復していないこと。そして、サバイブした大手マーケットメーカー2社の減速は、流動性をさらに圧迫する可能性がある。暗号資産業界がアラメダの穴を埋めるのに時間がかかっていることは少し驚きだ」
マーケットデプスは、市場を動かすのにどれほどの資本が必要かを推定することによって、取引所の流動性を測定するための指標で、FTX崩壊後に50%超低下し、年初からの暗号資産価格の上昇にもかかわらず回復していない。
アメリカの話?
だが、暗号資産ネイティブのマーケットメーカーにとって、2社の問題はアメリカ市場の問題であり、ほとんど気にしていないようだ。
パリに拠点を置くマーケットメーカー、Woortonのトレーディング責任者、ザレディン・トゥアグ(Zahreddine Touag)氏は「まだ大きな影響はない。短期的には一部の取引所の流動性が低下するが、より問題は、アメリカの取引相手がOTC(相対取引)での流動性を調達することが困難になること」とCoinDeskに語った。
さらに同氏は「流動性を調達したいブローカー、決済プロバイダーなどがオフショア、あるいはヨーロッパやアジアにシフトし始めると、将来的には問題となるかもしれない」と続けた。
暗号資産規制に対するアメリカの強固なスタンスは、すでにコインベース(Coinbase)のブライアン・アームストロングCEOなどからも批判されているが、長期的な影響は短期的なものよりもはるかに大きくなる可能性がある。
流動性の欠如は、資産を動かすために必要な資金が少なくなるため、ボラティリティの上昇につながる。これは、暗号資産市場の高いレバレッジという性質と相まって、金融の全セクターに広がる可能性のある信用リスクをもたらす可能性を秘めている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Kaiko
|原文:Bitcoin Liquidity on the Brink as Market Makers Pare Back in Crypto Markets