ビットコインとイーサリアムの相関関係、2021年以来最低に──暗号資産の政権交代の始まりか

時価総額で世界トップ2の暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)は、2022年の多くの間は連動して動いていた。その正の相関関係が今年に入って弱まり、市場のレジームチェンジが迫っていることを示唆している。

暗号資産データプロバイダーのカイコ(Kaiko)によると、5月15日の時点で、ビットコインとイーサリアムの価格変動の30日ローリング相関は77%と2021年以来最低で、2カ月前に見られた96%よりも著しく弱くなっている。

イーサリアムは過去に短期間、ビットコインから乖離したことがある。暗号資産のオプションやデリバティブの機関投資家向け流動性プロバイダーであるOrBit Marketsの取引担当バイスプレジデント、プルキット・ゴヤル(Pulkit Goyal)氏によると、今回の相関の弱まりは長期化する可能性があり、世界最大かつ最も流動性の高い暗号資産であるビットコインがイーサリアムやより広い暗号資産市場をもはやリードしていないかもしれないという。

「我々が今見ているものは、長期的な政権交代の始まりかもしれない。イーサリアムがPoWからPoSに移行したように、2つのトークンの基礎となる需要と供給の経済学は引き続き乖離していくだろう」とゴヤル氏は米CoinDeskに語っている。

また、「ビットコインは『デジタルゴールド』または優良株としての地位を固め、イーサリアムは成長株または新興市場として見られるようになるだろう」とゴヤル氏は付け加えた。

カイコの最新の週刊ニュースレターでは、「BTCとETHの両方が、特異な要因に突き動かされて、ますます乖離していくように見える」と同様の意見を述べている。

2022年9月、世界最大のスマートコントラクトブロックチェーンであるイーサリアムは、トランザクションを検証するためのエネルギー集約型のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)メカニズムから、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行した。最近ではイーサリアムは「シャペラ」アップグレードを実施し、報酬と引き換えにコインをスマートコントラクトプラットフォームにロックまたはステークするという受動的な投資戦略をリスクから解き放った。ネットワークによって焼却されるETHの量は、ネットワークの利用度合いと密接に結びついている。

一方、ビットコインはマクロ資産として、インフレ率や法定通貨の流動性の変化を手がかりに、従来の金融に対するヘッジとしての魅力を保ち続けている。ビットコインの供給拡大のペースは、マイニング報酬の半減期と呼ばれるプログラムプロセスにより、4年ごとに半分になる。4回目の半減は来年に予定されている。

「PoSのガバナンスメカニズムへの移行後、イーサリアムは同じ領域内の異なる資産クラスとして見られている可能性がある。これは変わるかもしれないが、当分の間はビットコインはマクロ経済要因と機関投資によってより支配され、一方、イーサリアムは影響を受けるものの、良くも悪くもマクロ経済状況との相関が低いだけなのかもしれない」 と取引所ビットフィネックス(Bitfinex)のアナリストは電子メールで述べている。

Bitfinexのアナリストはさらに「この2つの資産は、同じ領域にありながら、異なる資産クラスとして価格変動の観点から見ることができる。これは暗号資産市場にとっては良い動きだ」と付け加えた。

両者のデカップリングは、バイナンス(Binance)を含む主要取引所に上場されているビットコインとイーサリアムのペアの取引活動を後押しするかもしれない。

「デカップリングはトレーダーに対して、ドルを介さずに2つのトークンの間の相対的な価値を捉える新たな機会を提供する可能性がある。実際、BTC/ETHのオプションに対する需要はOTCで高まっている」とゴヤル氏は述べている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin-Ether Correlation Weakest Since 2021, Hints at Regime Change in Crypto Market