どの業界も、標準化によって規模が拡大する。昨年行われたイーサリアムブロックチェーンのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行により、ステーキング利回りのベンチマークを作成するチャンスが現れた。このベンチマークは、利回りの推移に基づく金融商品の基盤となり得る。
PoSでは、イーサリアムのバリデーター(ステーカーとも呼ばれる)がネットワークのコンセンサスメカニズムに参加するための担保として、保有するイーサリアムの一部をロックする(ネットワークに預け入れる)。ステーカーは報酬として、新たに発行されたイーサリアムと取引手数料を受け取る。
そして、すべてのバリデーターが受け取るオンチェーン報酬の年換算平均を毎日取得して公開することで、標準化されたベンチマークを作成でき、成果を確認できるようになる。ブロックチェーンに固有の透明性、不変性のため、ベンチマークに手を加えることは困難だ。例えば、長年にわたって伝統的金融(TradFi)の信用市場を動かしてきたLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)が操作されていたこととは対照的だ。
標準化されたイーサリアムのステーキングレートは、以下の2点ですぐに役立つだろう。
- ベンチマーク
- リスク移転のためのツール
イーサリアムのステーキングレートは、ベンチマークとして翌日物金利スワップ(OIS)などの従来の金融商品と同じように機能し、参照レートとしての利便性を提供する。新しい暗号資産(仮想通貨)固有ののシャープレシオから価格ベンチマークまで、標準化されたイーサリアムのステーキングレートを使用して将来のキャッシュフローを割り引くことができ、投資家がイーサリアムエコシステムへの投資の現在価値をより適切に評価できるようになる。
また、標準化されたステーキングレートは、リスク移転のための重要な、新しいツールの基盤となる。特にバリデーターが該当するが、ナチュラル・ヘッジをする人や将来の投機家の関心から、必然的にフォワードカーブが形成され、スワップや先物、その他のデリバティブ商品が作られる。伝統的金融のレートとのベーシススワップや法定通貨との通貨スワップは、ステーキングレートの入り口となる可能性があると同時に、新しい仕組債を作り出すことにもなる。
つまり、新しいステーキングレートは、イーサリアムブロックチェーンの構成要素として機能しながらも、次世代の金融プロダクトを解き放つ可能性を持つ。
CoinDeskの子会社のコインデスク・インディシーズ(CoinDesk Indices)と暗号資産投資会社コインファンド(CoinFund)は4月末、コンポジット・イーサー・ステーキングレート(Composite Ether Staking Rate:CESR)を共同で立ち上げた。これはイーサリアムエコシステムの進化における重要な発展であり、DeFi(分散型金融)とその先の世界におけるイノベーションの新たなフロンティアを表している。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:林 理南
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|原文:Ethereum Staking Needs Its (Honest) LIBOR