潰れかけたNFTプロジェクトが復活──ペンギンが生き残った理由とは

丸くて、かわいいペンギンのNFTコレクション「Pudgy Penguins」は、2021年7月のデビュー以来、成功と失敗の波を経験してきた。特に昨年、創設者たちについて疑惑が浮上した時には、急速な値下がりや人気の急降下などに苦しんだ。

「Pengus」や「the Huddle」と呼ばれる保有者コミュニティは、創設者たちがプロジェクトの当初のロードマップを実現できなかったことに腹を立てた。さらに、創設者たちがプロジェクトの資金を盗んだとの疑惑が浮上し、怒りは一段と高まった。

一部の保有者は2022年1月のコミュニティ投票で、創設者たちを追放。普通ならここで話は終わってしまうところだ。野心的な約束と悪者たちのせいで潰れた希望。残るのは落胆という共通点で結ばれたコミュニティ──。

しかしストーリーは、新たな展開を迎えた。ロサンゼルス在住の起業家で、自身もペンギンNFT保有者のルカ・ネッツ(Luca Netz)氏が750イーサリアム(ETH)でブランドを買い取り、立て直しとコミュニケーションの改善を約束した。

あれから約1年。新たな投資、現実世界の玩具、NFTセールスの回復によって、「みんなのための良いムードと前向きさ」というペンギンNFTの精神は回復し、価格も最高値を記録した。

成功に向けたペンギンの行進

ネッツ氏と新チームはプロジェクトを引き継いだ後、プロジェクトの知的財産(IP)の構築に注力し、「Web2からWeb3へのオンボーディングを先導するブランドとなる」という計画を打ち出した。彼らはもとの創設者たちとは異なり、そのロードマップを実行に移すステップを確実に踏み、2022年夏にはペンギンNFTをベースにした玩具と児童書の制作を発表した。

ネッツ氏はCoinDeskのインタビューに対して「IPは、何億人もの人々を暗号資産とWeb3に引き込むための『トロイの木馬』になると確信している」と述べた。

「人々にこの分野に参加したいと思ってもらうためには、キャラクターに恋してもらう必要があり、そのキャラクターこそが、Pudgy Penguinsだ」(ネッツ氏)

ムードとモメンタムが変わり、全体的には「暗号資産の冬」が続いていたにもかかわらず、2022年8月には過去最高のセールスを記録。2022年12月のクリスマスにも上昇を見せた。

「ペンギンたち、おめでとう! ネッツ氏に会ったことはないが、彼と新しい指導陣によるこの先の展開を楽しみにしている。

玩具やオンライン体験

2023年5月には、新たに900万ドルの資金調達を発表、その直後には約束していた玩具を発売。数日で2万個売れたと伝えられ、NFTマーケットプレイス「OpenSea」によると、2023年5月20日にフロア価格は6.2ETHまで上昇した。

「Pudgy Penguinsのおもちゃがアマゾンの売上チャートを席巻している。

以下のレガシーブランドを押さえて、現在おもちゃ&ゲーム部門トップ。
– ディズニー
– トランスフォーマー
– ポケモン
– バービー
– レゴ」

玩具と同時に発表された「Pudgy World」は、玩具を購入した人々をデジタル世界と結びつけ、シームレスな方法でWeb3にオンボーディングさせるもの。まさにネッツ氏が生み出すと言っていた「トロイの木馬」だった。

メールアドレスを登録した玩具の購入者は、知らず知らずのうちにNFTと暗号資産ウォレットを受け取り、暗号資産ウォレットを設定して資金を入れるという面倒なプロセスは簡単なものになっていた。

「Pudgy Penguinsチームは、NFTを通じてデジタルペンギンを作成し、カスタマイズすることができるオンライン体験『Pudgy World』を発表した。

物理的な玩具や獲得アイテムを利用して、ユーザーがNFTを所有していることを知らずに、NFTにオンボーディングできる。

その仕組みは以下のとおり」

好調な2023年上半期の締めくくりには、NFTレンディングプラットフォーム「Blend」が、「Pudgy Penguins」をプラットフォームに加えることを発表。「Azuki」や「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」といった人気コレクションと並ぶ地位を確立した。

コミュニティが鍵

NFTプロジェクトの中には、次なる飛躍を予感させながらも失敗に終わったプロジェクトが数多く存在する。一方で、暗く、凍てつくような「冬」を乗り越えたプロジェクトもわずかながら存在する。ペンギンは何が良かったのだろう?

Web3の世界では、コミュニティのパワーを過小評価してはならない。ネッツ氏をはじめとする新しいリーダーたちは、コミュニティの信頼と支持を得なければ、もとの創設者たちと同じ運命をたどることを理解していた。

そのために「毎月アップデート情報を提供する」という約束を果たし、ツイッターやディスコードでも定期的に情報提供を行った。さらに、コミュニティ内にサブコミュニティを作る権限を与え、コミュニティをつなぐリアルとバーチャルのイベントも企画した。

対照的に「More than Gamers」のようなNFTプロジェクトは、不明瞭なコミュニケーションと透明性の欠如に苦しみ、Pixelmon NFTは「最大かつ最高品質のゲーム」を約束しながら、本人たちも認める、笑ってしまうほど低クオリティなアートを提供。どちらも当記事を書いている時点では、立ち直ることはできていない。

コミュニティも、Pudgy Penguinsの成功を分かち合うことができる。このプロジェクトでは、ライセンス契約や他の取引を通じて、保有者もIPを活用し、利益を得ることができる。

ネッツ氏は5月25日、NFTマーケットプレース「Blur」の創業者Pacmanとのツイッター・スペースで、玩具は「16人の異なる保有者のIP」を使って作られたと語った。さらに、一般的な人が自力でライセンスを活用し、収益を上げることは難しいので、それをサポートすることが自分とチームの責任だと感じていると続けた。


「ペンギンを広告に載せる人など、どこにもいないと言われていた。

しかし今私たちは、アマゾンのベストセラーリストにペンギンを載せることに成功した」

同様にWeb3大手のユガ・ラボ(Yuga Labs)は、Bored Apesや他のNFTの保有者に、NFTのIPに対する完全な商業権を与えており、レストラン、飲料、アパレル、さらにはミュージシャンなど、Apesをアバターとして使う保有者が登場している。

ペンギンが成功し続けるかどうかは時間が経ってみないとわからないが、今のところ見通しは順調なようだ。当記事執筆時点、Pudgy Penguin NFTは取引高合計が3億ドル以上相当の17万457ETH、フロア価格は約9700ドル相当の5.4ETHとなっている。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Pudgy Worldのカスタマイズ画面(pudgyworld.com)
|原文:Pudgy Penguins NFT Project, Once Endangered, Proves Web3 Turnaround Is Possible