ビットコイン(BTC)は5月31日、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の幹部が流動性引き締めを停止する説得力のあるケースはないと述べた後、売り圧力に遭遇した。FRBの容赦ない引き締めは、暗号資産(仮想通貨)を含むリスク資産を揺るがしている。
クリーブランド連邦準備銀行のロレッタ・メスター(Loretta Mester)総裁は、31日に公開されたインタビューでフィナンシャル・タイムズに「私は一時停止する説得力のある理由を目にしていない」と語った。「金利を引き上げてから、経済の行く末の不透明感が薄れるまでしばらく持ち続けることの方が説得力があると思う」とメスター氏は付け加えた。
米CoinDeskのデータによると、ドルの流動性に左右されるビットコインは、メスターのコメントが発表された後、2%近く下落して2万7021ドルになった。
ウォール街のハイテク関連指数のナスダックに連動する先物は0.38%下落し、31日の市場で値が下がることを示唆した。主要な法定通貨に対する米ドルの価値を追跡するドル指数は、0.27%上昇し104.40になった。金は底堅く、0.2%高の1オンスあたり1962ドルで取引された。
FRBはインフレを抑制するため、2022年3月以降、金利を500ベーシスポイント引き上げて、5%にした。メスター氏の再利上げ支持と長期的な利上げスタンスは、予想を上回る熱いインフレデータが示された後のことであり、最近アメリカの金利予想がタカ派的に見直されていることを裏付けている。
5月26日に発表された公式データでは、FRBが好むインフレ指標である個人消費支出(PCE)コア物価指数が3月の4.2%から4月には4.4%に上昇し、アメリカの個人消費は4月に予想以上に増加したことが示された。FF金利先物では、トレーダーはもはやFRBが今年は利下げを行うとは考えておらず、6月に0.25%の利上げを行うことを完全に織り込んでいる。
過去7カ月間、トレーダーは一貫して、FRBが2023年前半に利上げを一時停止し、後半は流動性を高める利下げに進むと考えていた。これが、ビットコインの年初来上昇率65%超の大きな理由の1つだ。ビットコインは4月に10カ月ぶりの高値となる3万1000ドルを記録した。一方、ドル指数は4月までの7カ月間で12%以上下落した。
メスター氏は、債務上限に関する合意によって、アメリカ経済から「不確実性の大きな部分」が取り除かれたと述べている。
ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領とケビン・マッカーシー(Kevin McCarthy)下院議長は、31兆4000億ドルの債務上限を引き上げ、デフォルトを回避する暫定的な合意に達した。議員たちは今後、この合意に関連する法案を下院と上院で可決する必要がある。
アナリストは米CoinDeskに、この取引が承認されれば、財務省は債券を発行して財源を補充し始め、その過程でシステムからドルの流動性を吸い上げるだろう。それは一般的に、リスク資産にとって弱気な状況になる。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
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|原文:Bitcoin Recedes to $27K as Fed’s Mester Favors Unabated Tightening