テザー(USDT)の時価総額、過去最高の832億ドルに──ステーブルコイン市場全体は縮小

ドル連動型ステーブルコインのテザー(USDT)は、ステーブルコイン市場が縮小しているにもかかわらず、過去最高の時価総額に並んだ。

USDTの時価総額は6月1日、832億ドルに達し、約1年前のピークに匹敵すると発行元のテザー(Tether)社は述べた。2022年5月、テラ(Terra)ブロックチェーンが崩壊、その後の市場低迷で失った約180億ドルを回復したことになる。

こうしたUSDTの動きは、14カ月にわたって縮小を続けるステーブルコイン市場に逆行している。

USDTは、最大のライバルの苦境から大きな利益を得ている。サークル(Circle)が発行する時価総額No.2のステーブルコイン、USDコイン(USDC)は3月、同社が多くの準備金を預けていたシリコンバレー銀行が破綻したことで打撃を受け、その後、一時ドルペッグを失ったこと(すぐに回復した)が今も重荷になっている。

また一時、200億ドル規模の時価総額を誇ったバイナンスUSD(BUSD)は2月、ニューヨーク州の規制当局が発行元のパクソス(Paxos)に発行停止を求めたことで、実質的に命運を絶たれた。

テザー社は、未公開の債務者に対するリスクの高い融資など、準備資産に関する透明性の欠如を長年批判されてきた。

だが、ステーブルコインは、アメリカの規制当局の動きや銀行の不安定性から安全と認識されているため、暗号資産業界が激動したタイミングにUSDTの人気は高まり、市場シェアは少なくとも過去22カ月で最高水準となっている。

暗号資産調査会社Kaikoのアナリスト、コナー・ライダー(Conor Ryder)氏は「テザー(USDT)の増加は、ほとんどのステーブルコイン保有者にとって、ドルペッグの安定性が発行元の透明性よりもはるかに重要であることを示している」とレポートで指摘した。

先月、Kaikoは、USDTの「通常とは思えない」時価総額の増加について、取引高が数年来の低水準に急落していることと矛盾しているとして疑念を呈した。他のステーブルコインの時価総額は、おおむね取引高と相関している。

テザー社の最高技術責任者パオロ・アルドイノ(Paolo Ardoino)氏は、この違いはUSDTが主に発展途上国での決済に使われるようになったことに起因しており、現在では取引の約40%を占めているとWebメディアのThe Blockに語っている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Unsplash
|原文:Tether Market Cap Climbs to All-Time High of $83.2B, Even as Stablecoin Market Sinks