SECによる提訴──バイナンスとコインベース、共通点と相違点

背景

米証券取引委員会(SEC)は、世界最大とアメリカ最大の暗号資産(仮想通貨)取引所、バイナンスとコインベースに対して、2日続けて大規模な提訴を行った。2つの提訴には共通点があるが、かなり大きな相違点もある。

重要ポイント

今回の提訴は、少なくとも議会が何らかの法案を可決するまで、アメリカにおける暗号資産規制のあり方を決定づけるものになるかもしれない。問題は、バイナンスとコインベースがいかにして身を守るかだ。

詳細分析

バイナンスとコインベースの提訴については、CoinDeskでも、すでにさまざまに伝えてきた。今、私が興味を持っているのは両社の対応。それぞれ多くの声明を発表し、幹部たちがテレビとSNSで容疑について発言しているが、現状、両社には明確な違いがある。

コインベースのブライアン・アームストロングCEOは、同社はステーキングサービス(10州の規制当局からも厳しい目が注がれている)を停止するつもりはないとテレビやイベントで発言している。

一方、バイナンスUSは6月7日、50以上のトークンペアの取引を停止すると発表した。そして、顧客資金が危険にさらされたことはなく、SECの評価には同意できないと何度も述べている。

コインベースのケース

今年初めに「ウェルズ通知(法執行の可能性を知らせる通知)」を受け取って以来、コインベースが主張していることの1つは、同社がSECの支援を受けて株式公開したという事実だ。

「SECは我々のビジネスを審査し、2021年に公開企業になることを許可した」とアームストロングCEOはツイートしている。

これは誤解を招く主張、とかつてSECの弁護士を務めたアレクサンドラ・ダムスカー(Alexandra Damsker)は述べる。

同氏によると、SEC企業財務部の仕事は、重要な虚偽記載や見落としなどを探し、SECの規則が満たされているかどうかを確認すること。担当者は、何かが合法か違法かを判断することが仕事ではないという。だが、疑わしいものを見つけたら、執行部や他の職員に警告できると同氏は語った。

アームストロングCEOはまた、ゲンスラーSEC委員長がよく言うように、同社はSECを「訪問して登録」しようとしたが、そのための「道筋がない」と述べた。

この不満は最近、ロビンフッド(Robinhood)のコンプライアンス責任者ダン・ギャラガー(Dan Gallagher)氏も議会で繰り返した(ロビンフッドも暗号資産取引ビジネスに関してSECから召喚状を送られている)。

バイナンスとコインベースの両社は、ガイダンスではなく執行による規制というSECのアプローチに改めて不満を表明している。だが、間違いなく言えることは、提訴のなかでSECは一部の暗号資産は未登録の証券であると明確に述べたことだ。

暗号資産、少なくともバイナンスとコインベースに対する訴状にあげられているものは、証券なのか?

SECは明らかにその答えを「イエス」と考えており、SECの考えを覆そうとしているコインベースの努力は無意味なものになりそうだ。

バイナンスのケース

バイナンスも、SECの調査に協力し、「交渉による解決」に向けて努力してきたと声明で述べ、提訴に対抗するスタンスを取っている。

「我々はSECの提訴を真摯に受け止めているが、SECの執行行為の対象になるべきではない。まして、緊急で行うなどなおさらだ。我々は自社プラットフォームを全力で守っていく」とバイナンスは述べている。

「残念ながら、SECが我々と生産的に関わることを拒否したことは、デジタル資産業界に大いに必要とされる明確さとガイダンスを提供することをSECが誤って意識的に拒否していることの一例に過ぎない」

もちろん、バイナンスとコインベースの提訴には、いくつかの大きな違いがある。コインベースが直面しているのは「証券を上場したが、ブローカー、取引所、清算機関として登録しなかった」というありきたりなもの。

一方、バイナンスには、同社とチャンポン・ジャオCEOがバイナンスUSの顧客資金にひそかにアクセスし、ジャオCEOの個人的な会社で流用していたとの容疑がかけられている。

バイナンスUSはさまざまなツイートで、SECはこれまで顧客資金について懸念を示しておらず、同社の弁護士はこれらの問題についてすでにSECと協議したと述べている。

6月13日、バイナンスUSの資金の一時的差し止め命令に関して、審理が行われる予定。バイナンス側の答弁は、SECの包括的な訴えに対する同社の主張を示すものになると思われる。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:コインベースのアームストロングCEOとバイナンスのジャオCEO(CoinDesk Archives)
|原文:Providing Regulatory Clarity (Binance and Coinbase Edition)
※編集部より:一部本文を修正して更新しました。