米証券取引委員会(SEC)が大手暗号資産(暗号資産)取引所のバイナンス(Binance)とバイナンスUS、コインベース(Coinbase)を提訴したことで6月5日から8日かけての4日間で、この3つの取引所からの純流出は約40億ドル(5600億円、1ドル140円換算)にのぼった。
イーサリアムネットワークからの純流出は31億ドル、ビットコイン(BTC)は8億6400万ドル。データは、ナンセン(Nansen)とグラスノード(Glassnode)によるもので、純流出とは、引き出し(出金)が預け入れ(入金)を上回ったことを意味する。
いずれの取引所も出金は通常どおりに行われた。
SEC提訴に市場が動揺
SECはまず5日に、バイナンスとバイナンスUSの運営会社、バイナンスの創業者兼CEOのチャンポン・ジャオ(ChangpengZhao)氏を、連邦証券法違反の疑いが多数あるとして提訴。翌6日に、未登録証券を提供したとしてコインベースを提訴した。
暗号資産市場は提訴に動揺し、バイナンスコイン(BNB)、カルダノ(ADA)、ポリゴン(MATIC)など、SECが今回の提訴で有価証券と見なしたトークンは先週、最も大きく下落した。
SECがバイナンスUSの資産凍結を求めていることを受けて、トレーダーやマーケットメーカーはバイナンスUSからの撤退を始めており、ビットコインとイーサリアムは一時、他の取引所と比べて大幅に割高な状態で取引された。
バイナンスの純流出は2022年12月以来最大
ナンセンのデータによると、取引高で世界最大の暗号資産取引所バイナンスでは、先週4日間のイーサリアムブロックチェーンからの純流出が20億ドルに達した。この金額には、イーサリアム(ETH)とイーサリアムブロックチェーンベースのトークンが含まれている。
グラスノードのデータによると、同じ期間中のビットコイン(BTC)の純流出は約8億3800万ドル(3万1868BTC)。
7日の純流出は1万3953BTCにのぼり、1日あたりの純流出としては2022年12月以来最大となった。2022年12月は、大手取引所FTXの破綻で不安が広がっていたうえに、バイナンスUSD(BUSD)の準備金に関するレポートが投資家の信頼に打撃を与えていた。
だが、バイナンスの暗号資産ウォレットによると、先週の純出金額はきわめて大きかったが、取引所の全資産の約5%に過ぎない。
同じ4日間のコインベースの純流出は、イーサリアムネットワークが10億ドル、ビットコインが2500万ドル。
バイナンスUSのイーサリアムブロックチェーンの純流出は7500万ドル、ビットコインはデータがないため不明。
バイナンスUSは米ドルの出金を推奨
バイナンスUSは9日、同社に対するSECの「きわめて攻撃的で威圧的な戦術」を受けて、ユーザーはできるだけ早く米ドルを出金すべきと表明した。バイナンスUSは米ドルでの入金を一時停止。米ドル取引ペアの上場廃止を近く予定しており、一時的に暗号資産のみの取引所に移行する。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:林理南
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|原文:SEC Clampdown Spurs $4B Deposit Flight From Binance, Coinbase and Binance.US