ビットコイン、3つの追い風

ビットコイン(BTC)の上昇に賭けていたディレクショナル・トレーダー(値動きを利用して、収益を上げるトレーダー)はここ2カ月、落胆させられてきた。ビットコインは、2カ月前に3万1000ドルの高値を記録して以来、16%以上も下落した。

それでも年初から60%近く上昇しており、IT株を重視したナスダックの38%上昇に比べても、素晴らしいパフォーマンス。マクロ経済状況と、他の強気の追い風を受け、最も抵抗の少ない道は価格上昇の方向にあるかもしれない。

ドル安と債券市場のボラティリティ低下

主要通貨に対する米ドルの価値を反映したドルインデックス(DXY)は先週、1.2%下がって102.30となり、3週間連続の下落となった。下落が続いたことで、暗号資産には重荷となっていた、それまで3週間で記録した50%以上の上昇は帳消しとなった。

「ドル下落はビットコインにはプラス。つまり、これまでビットコンやリスク資産が最も力強く上昇したのは、DXYが弱気相場の間だった」と暗号資産情報企業Jarvis Labsは指摘。

「連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ(およびインフレの鎮静化)を見送ったことで、ドルインデックスの100超えは長くは続かないだろう」(Jarvis Labs)

 FRBは先週、金利を5~5.25%で維持することを決定。昨年以来ドルを上昇させ、リスク資産を混乱させてきた15カ月に及んだ利上げを一時停止した。FRBは今後の利上げ再開の可能性を残しているが、実際に再開するかどうか、アナリストたちは疑問視している。

「利上げは再開されないだろうと私が考える理由は、インフレ率が反応しているから。ゆっくりとだが成果は出ており、金利リスクを高めることは、商業不動産ローンからのダメージにようやく対処し始めた、すでに脆弱な銀行システムに不要な負担を与えるだけ」とCoinDeskコラムニストのノエル・アチェソン(Noelle Acheson)氏は述べた。

一方、米国債(市場)のボラティリティは、急速に低下している。これは多くの場合、金融市場でのリスクテイクの高まりにつながる。

チャートプラットフォームTradingViewのデータによれば、ICE(インターコンチネンタル取引所)とバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(Bank of America Merrill Lynch)が算出する、国債の先行き変動リスクを示す米国債市場オプション・ボラティリティ・インデックスは先週、10%近く低下し、2月以来の最低水準を記録した。

「ビットコインに良い追い風が吹いている
USDは下落し、今はUSDCNG(米ドル/オフショア人民元)の低下も加わった
米国債の利回りは昨日、逆転
ボラティリティは低下傾向
RRP(リバースレポ)の提供流動性は大幅に低下
中国の緩和政策
(市場は)心配の壁を登っている」

※「心配の壁を登る」は、不確定要素がありながら、強気トレンドが生まれていることを表す慣用句。

ブラックロックのETF

世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)は先週、ビットコインスポット(現物)ETF(上場投資信託)の承認を申請。ここ12カ月、悪いニュースの連続に打ちのめされてきた市場にうれしい驚きをもたらした。

暗号資産インデックスを手がけるCFベンチマークス(CF Benchmarks)のケン・オデルガ(Ken Odeluga)氏は、ブラックロックが提案するファンドからは、昨年のひどい弱気相場を経ても、ビットコインベースのプロダクトに対する機関投資家からの関心が強いままであることがうかがえるとして、次のように述べた。

「今回申請したファンドによってブラックロックは、ビットコインに対する投資家からの需要は、上場投資信託という規制を受けた、便利で馴染みのある形でのメインストリームのビットコインプロダクトを実現するほど広範なものであることを示している」(ちなみにブラックロックは、CFベンチマークスのビットコイン参照レートを使用する予定)

「下のチャートは、投資家が簡単にゴールドへのエクスポージャーを得られるようにしたGLD(SPDRゴールド・シェアETF)がローンチされた時のもの。

ブラックロック(これまでのETF承認率は99%)のビットコインETF(GLDと仕組みは非常に似ている)がローンチされれば、多くの人へのビットコインエクスポージャーの道を開くため、同じような値動きが見込まれる」

米証券取引委員会(SEC)はこれまで、ビットコインの価格操作への懸念を理由に、スポットETFの申請を複数回却下してきた。ブラックロックの申請には、市場操作のリスクを排除し得る監視共有協定が含まれており、申請は承認されるかもしれない。

一部の専門家は、ブラックロックの申請はゲンスラーSEC委員長へのメッセージであり、著名な民主党支持者として知られるラリー・フィンク(Larry Fink)氏率いる同社は、SECのアンチ暗号資産姿勢を支持しないことを表しているのではないかとみている。もちろん一方で、承認を得るための純粋な申請だと考える人たちもいる。

「どちらにしても、非常に喜ばしいポジティブな動きであり、『SECを訪れて登録しろ』だけにとどまらない、さらなる明確性を求める圧力をSECにかけることになる。アメリカの金融イノベーションに暗号資産市場が将来的に果たす役割をめぐる政治闘争は激化しているが、終結にはほど遠い」とアチェソン氏は指摘する。

安全な避難先に対する需要

SECは6月上旬、未登録の証券として複数の暗号資産を提供したとして、大手暗号資産取引所のバイナンス(Binance)とコインベース(Coinbase)を提訴。ただし訴状では、ビットコインとイーサリアム(ETH)は言及されなかった。

「規制リスクは主にアルトコインの投資家に集中しており、BTCとETHしか保有していない人たちへの影響は限られている」と暗号資産運用会社Blofinのマット・フー(Matt Hu)CEOは指摘し、次のように続けた。

「しかし、SECが訴訟に勝利すれば、すべてのアルトコインが証券と見なされ、証券の基準で規制を受ける必要が出てくるかもしれない。そうなれば、アルトコインのトレーディングはさらにオフショアに分散化されるだろう。さらに、流動性はBTC、ETHをはじめとする主要暗号資産にさらに集中することになる」

ビットコインのドミナンスは、投資家がアルトコインからビットコインへと資金を移していることを示すかのように、3年間続いていたパターンを脱した。

暗号資産アナリスト「The DeFi Investor」もツイッターで、ドミナンスの高まりを考慮すれば、ビットコインはアルトコインを上回るパフォーマンスを続けるかもしれないと指摘している。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Could Benefit From These 3 Bullish Tailwinds