米証券取引委員会(SEC)はこれまでに、多くのビットコインETF(上場投資信託)の承認を延期してきた。しかし今週、2つの企業がより限定的な商品をローンチしようとしている。
ETFに類似したビットコイン商品
2019年9月3日(現地時間)の発表によると、ヴァンエック・セキュリティーズ(VanEck Securities)とソリッドX・マネジメント(SolidX Management) ── 以前、両社はビットコインETFの承認を求めたが、SECはその判断を延期している ── は規制上のハードルを迂回するための独特な手段を取ることを明らかにした。SECの免除規定を利用することで、2社によるヴァンエック・ソリッドX・ビットコイン・トラスト(VanEck SolidX Bitcoin Trust)の証券を、個人投資家ではなく、ヘッジファンドや銀行などの企業に提供することが可能となる。
実際には本来のETFではないが、類似している。ヴァンエックでETF商品の責任者を務めるエド・ロペス(Ed Lopez)氏は「ETFと同じように証券の作成と償還が可能、だがETFではない」とCoinDeskに語った。
「ETFとは異なり、国内の取引所には上場されず、OTC Link ATSプラットフォームで扱われる。この種の商品としては初めてのもの。ブローカー間の取り引きが店頭で行われることから、我々は仮にBroker Traded Fund、BTFと呼んでいる」
機関投資家クオリティ
証券は、SECの規則144Aに準拠して、9月5日から発売される。同規則において、私募証券は「適格機関投資家」間で取り引きされ、所有期間が短期の場合、SECに登録する義務は免除される。
「この商品は、機関投資家に対して、伝統的かつ主要な証券取引口座を通じた取り引きが可能な、物理的な裏付けを持つビットコイン商品へのアクセスを提供する」と両社はプレスリリースに記した。
「ビットコインへのアクセスの提供と標準的なETFの作成・償還プロセスを可能にした、機関投資家が扱うにふさわしいクオリティと明瞭さを有した初めての商品」
ヴァンエック/MVISのデジタル資産戦略担当ディレクター、ガーバー・ガーバックス(Gabor Gurbacs)氏は以下のように語った。
「我々はデジタル資産分野における市場構造の発展を引き続きサポートしていく。適格機関投資家限定の規則144Aに準拠したビットコイン商品は、機関投資家がビットコインを取り扱うきっかけとなり、適切に規制されたETFの仕組みが実際に機能することを示すショーケースとなるかもしれない」
リリースによると、ソリッドX(SolidX)は資産運用を行い、ヴァンエックは「マーケティングサービス」を提供、さらにバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNY Mellon)が指定参加者として加わる。
投資家には、信託が保有するビットコイン・プライベートキーの「盗難や紛失」に対する保険も提供される。
ソリッドXのCEO、ダニエル・H・ギャランシー(Daniel H. Gallancy)氏のコメントは以下の通り。
「標準的なETFの設定・償還プロセスと、確立した清算・決済プロセスを持つアメリカ初のビットコイン商品によって、機関投資家はようやく慣れ親しんだやり方によって、ビットコインを取り扱う機会を手にすることができる。我々は、この商品を、機関投資家にふさわしいクオリティを持つ仮想通貨商品をマーケットに送り出そうとしているソリッドXとヴァンエックのパートナーシップにとって、エキサイティングなネクストステップになると期待している」
今日に至るまで、SECはいかなる仮想通貨ETFも認可していないが、SECのコミッショナー、ロバート・ジャクソン(Robert Jackson)氏は2019年2月、仮想通貨ETFの申請は「ゆくゆくは」SECの基準を満たすことになるだろうと述べた。
現在、ビットワイズ・アセット・マネジメント(Bitwise Asset Management)、ヴァンエック/ソリッドX、ウィルシャー・フェニックス(Wilshire Phoenix)が、アメリカで初めて仮想通貨ETFを提供することを目指している。しかし、SECは8月12日、申請されていたビットコインETFの承認を巡る判断を全て延期した。これらの決定は現在、今月と来月中に予定されている。
翻訳:山口晶子
編集:町田優太、増田隆幸
写真:VanEck executive Gabor Gurbacs image via CoinDesk archives
原文:Van Eck, SolidX to Offer Bitcoin ETF to Institutions via SEC Exemption: Report