クジラの動きで、BTCとETHのボラティリティ指標が異例の状態に

23億ドル(約3306億円)相当のイーサリアム(ETH)絡みのオプション契約が、6月30日に大手暗号資産(仮想通貨)デリバティブ取引所のデリビット(Deribit)で期限を迎える。

この極めて重要な四半期決済を前に、デリビットでは30日インプライド・ボラティリティ(IV)指数におけるイーサリアム(ETH DVOL)とビットコイン(BTC DVOL)のスプレッドがマイナスになっている。

デリビットによると、相対的なイーサリアムの安定性を示す負のスプレッドは、イーサリアムのコールオプションの「オーバーライティング」または売りに対する機関投資家の関心の高まりに起因する。このダイナミックな動きは、30日の満期前後に市場が大きく変動する可能性をもたらす。

オーバーライティングには、過大評価されたコールオプションや強気のデリバティブベットを、通常は長期のバイ・アンド・ホールド・ポジションに対して売却または売建てすることが含まれる。これは、現物市場での保有に加えて追加収入を得るための一般的な方法だ。コールの売り手は、固定された報酬と引き換えに価格上昇から買い手を保護する。

年初来、市場ではイーサリアムの大規模なオーバーライティングのフローが見られ、 インプライド・ボラティリティが低下している。インプライド・ボラティリティ(IV)とは、トレーダーが予想する価格の乱高下のことで、オプションの需要によってプラスの影響を受ける。

6月限が今週金曜日に決済されるため、オーバーライトしているトレーダーはポジションをロールオーバーする可能性がある。言い換えれば、金曜日に満期を迎えるショート・ポジションが解消され、7月または9月の満期に移動する可能性がある。そうなると、ビットコインとイーサリアムの市場におけるIVの価格決定に大きな変化が生じる可能性がある。

「ETHは、機関投資家による(コールオプションの)実質的な売りを目にしており、このトレーダーは『ETHオーバーライター』、別名『ETHボラティリティ売りクジラ』と呼ばれている! 驚くべきことに、これはETHのDVOL(VIXに似たインプライド・ボラティリティ指数)がBTCのそれよりも低いというシナリオをもたらした」とデリビットの最高リスク責任者ショーン・フェルナンド(Shaun Fernando)氏は米CoinDeskに語った。

「これらの実質的なポジションが期限切れに近づくにつれ、参加者がポジションのロールオーバーを検討するため、ボラティリティの魅力的なシフトにつながる可能性がある」とフェルナンド氏は付け加えた。

スプレッドは先週、3年ぶりの低水準を記録した(Amberdata)

アンバーデータ(Amberdata)によると、記事執筆時点でETH-BTC DVOLスプレッドは-2.5で、先週には-7.8という3年ぶりの低水準を記録した。インプライド・ボラティリティ(IV)は、特定期間における価格の乱高下に対するトレーダーの予想を表し、オプションの需要によってプラスの影響を受ける。コール・オプションは原資産に対する強気のベットを表し、プットは弱気のベットを表す。

店頭暗号資産流動性ネットワークのParadigmによると、ロールオーバーがETH-BTC DVOLスプレッドに影響を与える可能性はあるものの、ETHの価格は1800~1900ドル程度にとどまる可能性が高いという。

「期限切れに向けたETHディーラーのガンマを見ると、1800~1900ドルのストライクがスポットを引きつけると予測している。これは主に、以前に議論されたオーバーライティングのフローによりディーラーがロングに偏っていることが主な理由だ」とParadigmは最新の市場予測で述べている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Amberdata
|原文:Whale Drives Ether-Bitcoin Volatility Spread Lower Ahead of Options Expiry