6月のビットコイン(BTC)対ドルは、中旬から堅調な推移となり、2カ月ぶりに3万ドル台を回復している。
5月末の米債務上限問題解消で28,000ドルを回復したビットコイン相場だったが、米クリーブランド地区連銀メスター総裁が「利上げを止める説得力のある理由はない」と発言したことで上値を重くすると、6月5日には米証券取引委員会(SEC)がバイナンスとCEOのCZを提訴したことで、相場は26,000ドルを3カ月ぶりに終値で割り込んだ。
その翌日には、米大手暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベースもSECに提訴されたが、ビットコインは2月高値となる25,338ドルで綺麗に反発すると、27,000ドル台まで踏み上げた。しかし、その後はアルトコインを筆頭に売りが広がり、ビットコインも上値を圧迫されると、SECからの訴訟を懸念したロビンフッドがカルダノ(ADA)、ソラナ(SOL)、ポリゴン(MATIC)の取り扱い廃止を発表し、ビットコインは再び26,000ドルを割った。
さらに、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の経済見通しで、年内残り2回の利上げの可能性が示唆されると、ビットコインは会合通過後に一段安を演じ、一時は25,000ドルをも割り込んだ。
一方、ビットコインは節目の25,000ドル周辺で下げ止まり、同水準からの下抜けを回避。すると、米大手資産運用のブラックロックが現物型ビットコイン上場投資信託(ETF)の上場申請をSECに提出し、相場は反発。さらに、ウィズダムツリーやインベスコもブラックロックに続き現物型ビットコインETFの上場申請を提出するなか、フィデリティやチャールズ・シュワブが後援につく米取引所のEDX Marketsがサービスを開始するなど、伝統的金融機関(TradFi)のビッグプレイヤーが続々と参入したことが好感され、ビットコインは28,000ドルを回復した。
ビットコインの回復劇はこれで止まらず、21日にはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の議会証言で、仮想通貨のアセットクラスとしての持続力を認める発言があり、相場は一気に30,000ドル周辺まで回復すると、23日にはSECがボラティリティ・シェアーズのレバレッジ型ビットコイン先物ETFに上場承認を下し、相場は4月14日につけた年初来高値を僅かに更新した。
足元では、ブラックロックの現物型ビットコインETF申請に端を発するビットコインの「TradFi参入相場」が一服しており、27日にはフィデリティも現物型ビットコインETFの申請準備をしているとの報道があったが、31,000ドル周辺が相場のレジスタンスとなっている。直近2カ月ほどの下げ幅をものの1週間で取り戻したビットコイン相場だが、こうした買いの息切れ感やテクニカル的な過熱感も相まって、高値揉み合いとなっている格好だ。
米国で初の現物ベースのビットコインETFが仮に承認されれば、マーケットへのインパクトは大きいと言えるが、こうしたETF関連のニュースフローが途切れれば足元のトレンドも持続しない可能性は否めない。
他方、ビットコインとは逆相関関係にある米国債利回りは、指標10年債利回りも金融政策動向に敏感な2年債利回りも足元では横ばいとなっており、市場はFOMCで示された年内残り2回の利上げの有無と利下げ開始のタイミングを見極めようとしており、マクロ的な観点からは持続的な投資需要による資金の流入が見込み難い状況と言えよう。
パウエル議長は6月に行われた議会証言で残り2回の利上げについて、経済が想定通りに推移することを条件とはしているが、商工業向け融資減少、商業向け不動産ローン不履行率上昇、新規失業保険申請件数増加やサービス業購買担当者景気指数(PMI)の低下など、一部で経済の綻びが確認される一方で、6月は消費や住宅市場の堅調さが確認され、肝心な消費者物価指数(CPI)のコア指数は高止まりとなっており、7月にFRBがもう一度利上げを再開してもおかしくはない状況と言えよう。
以上のことから、7月のビットコイン相場は高値更新に苦戦する展開が想定される。FRBによる利上げの有無を巡って相場が大きく崩れる可能性は、市場が利上げの確率を既に70%以上織り込んでいることから低いと見ているが、3万ドルの維持に失敗すれば3月高値や2021年安値が密集する29,000ドル周辺までの値幅調整も視野に入れておきたい。
|編集:増田隆幸
|画像:bitbank