好調なビットコイン価格、上昇を損なう要素は?

マクロ経済関連の要素が暗号資産(仮想通貨)に与える影響は、落ち着いていくだろうか? その答えは結局のところ、微妙なものになるかもしれない。マクロ要因は常に一定の役割を果たすが、特にインフレに関しては、重要な問題が比較的予測可能な形で発生している。

いくつかのハプニングを除けば、インフレ予想とFOMC(連邦公開市場委員会)の金利についての反応は予想通りだった。

苦境を乗り切ったBTC

ビットコイン(BTC)は年初から87%上昇し、3万ドル付近でサポートを見つけたようだ。イーサリアム(ETH)も64%上昇、ビットコインには劣るが、それでも目覚ましいパフォーマンスを見せている。

ビットコインもイーサリアムも、暗号資産業界全体にとっての危うい時期をおおむね乗り切った。ビットコインの固定出来高加重平均価格(AVWAP)と呼ばれる指標がそれを物語っている。

出来高加重平均価格(VWAP)は、トレーダーが出来高と価格を考慮して資産の平均価格を見極めることのできるテクニカル指標。AVWAPは開始点を好きな日付に固定してものだ。

SEC(米証券取引委員会)がバイナンス(Binance)とコインベース(Coinbase)を提訴して以降のビットコインのAVWAPは現在の取引価格よりも9.1%低い。バイナンスがFTX買収を撤回した2022年11月9日のAVWAPは2万2632ドル。セルシウス(Celcius)が2022年6月に引き出しを一時停止した時点で固定するとAVWAPは2万1400ドルとなる。

つまり、ビットコインは一連の災難から立ち直った。

ビットコイン価格を牽引する業界の最新イベントは、ブラックロック(BlackROck)によるビットコインETF(上場投資信託)の申請だろう。

こうなると問題は「何がビットコインを悪い方向に向かわせる可能性があるか?」。どのようなマクロ経済動向が価格を下落させ、前述の上昇分を削ってしまう可能性があるだろうか?

パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の最近の発言を読んでみると、FOMCは現在の方針を継続するしかないと受け入れているようだ。

市場では、2023年に少なくともあと2回の利上げが行われ、最高で5.6%程度になると予想されている。そうなった場合、どちらの方向にも価格に大きなショックがもたらされるとは考えにくく、すでに織り込み済みだろう。

しかし、暗号資産市場には、注目すべきマクロ要因が他にもいくつか存在している。

銀行はストレステストに合格

今年最大のニュースの1つは、シルバーゲート銀行(Silvergate Bank)とシリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank)の破綻だった。どちらも暗号資産業界と関係があったため、このニュースは暗号資産業界全体に影響を与えた。両銀行の破綻は、FOMCの利上げが行き過ぎで、銀行間で過剰なストレスが生じていたという考えを招いた。

しかし、システム上重要な銀行23行に対して最近実施されたストレステストによると、これらの銀行は深刻な景気後退を乗り切り、家計への適格な融資を継続する態勢が整っているようだ。

このテストでは、失業率10%、商業用不動産価格40%下落、住宅価格38%下落が想定された。

FOMCは、影響が出る可能性があるにもかかわらず、積極的な利上げに踏み切る十分な余地があると考えるかもしれない。利上げ後の景気低迷は痛みを伴うだろうが、銀行システムを破綻させることなく、インフレ率を低下させる可能性が高い。

増え続ける消費者リボ払い債務

リボ払い債務は、過去最高水準にある。あまり注目されるものではないが、それでも重要だ。

リボ払い債務(St. Louis Fed)

暗号資産投資は引き続き、個人投資家による要素が大きい。ブロックチェーン分析会社グラスノード(Glassnode)のデータによると、1ビットコイン未満を持つ投資家が保有するビットコインは130万BTC、保有者数は2021年以降、73%増加している。

私は暗号資産投資に関連して、クレジット残高の増加と、金利上昇、雇用減少の可能性の組み合わせを懸念している。

厄介な逆イールドカーブの継続

米国債の2年物利回りと10年物利回りのスプレッド(差)は大きく反転しており、1981年以来最大となるマイナス1.08%となっている。

2年・10年米国債スプレッド(St. Louis Fed)

歴史的に見ると、逆イールドカーブの後にはしばしば、景気後退が続く。しかし、FOMCの最新の経済予測サマリーは景気後退を予測していないようだ。

それでも、経済の歴史と経済予測との間にこのようなすれ違いがあることは、市場で織り込まれていないかもしれない一定の不確実性を示唆している。

強気のバイアスを持った投資家として私は「自分が間違っていたらどうしよう?」という疑問を抱かざるを得ない。これは私だけではないだろう。このような疑問を抱く投資家が増えれば、暗号資産への資金投入に消極性が広がる可能性もある。

それ自体、暗号資産価格にとっては短期的な障害となるかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Prices Are Hot, but Here’s What Could Crush the Rally