リップル(Ripple)社はSEC(米証券取引委員会)との裁判で部分的な勝利を収め、業界にわずかながらも規制の明確さをもたらした。
取引所やアルゴリズムを通したリップル社のXRPの販売は投資契約にはあたらないと、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は13日に判決を下した。しかし、機関投資家への販売は連邦証券法に違反するとしている。
XRPは判決を受けて上昇し、暗号資産取引所ジェミナイ(Gemini)はXRPを上場する可能性があると述べた。しかし専門家は、現段階では判決は、XRPが証券にあたるのかどうかという問題を解決するには至らないと述べている。
ゲンスラー委員長のもと、SECはほとんどの暗号資産は証券にあたると主張し、発行者は販売する前に登録プロセス(時間と手間がかかる)を経る必要があり、取引所は上場する前にブローカー・ディーラーとして登録する必要があると主張してきた。業界は、アナログの時代に制定された法律が、インターネットから生まれた資産クラスにどのように適用されるかは不明瞭と主張している。
…this decision raises more questions than it answers. How can a thing be a security in one transaction, but not in another? UK legal doctrine evolving to answer this (the "Third Thing" concept). In US, it has not; hopefully Congress will get involved and clear things up soon.
— Preston Byrne (@prestonjbyrne) July 13, 2023
…この判決は、答えよりも多くの疑問を生んでいる。ある取引では有価証券になり、別の取引では有価証券にならないのはどういうことか? イギリスの法理論はこれに答えるために進化した(「第3のもの」という概念)。アメリカではそうではない。議会が関与し、すぐに事態が解決されることを願っている。
裁判所は、SECのブロックチェーンプラットフォームに対する象徴的な裁判において、原告の申し立てを部分的に認めた。SECは2020年、同社およびブラッド・ガーリンハウスCEO、クリスチャン・ラーセン共同創業者に対して、約13億ドル相当のXRPを販売する前にXRPを有価証券として登録しなかったとして提訴した。
SEC v. Ripple in brief:
— Bill Hughes : wchughes.eth 🦊 (@BillHughesDC) July 13, 2023
Ripple putting XRP on exchanges for trading (and funding their operation with those sales) is NOT an investment contract, and therefore not a security.
Ripple paying people in XRP is NOT an investment contract and therefore not a security.
XRP is NOT a… https://t.co/FzlPbkKH21
SEC 対リップルの概要:リップルが取引のためにXRPを取引所に置く(そして、売上を運営資金にあてる)ことは投資契約ではなく、したがって有価証券ではない。
リップルがXRPで支払うことは投資契約ではないため、有価証券ではない。
XRPは…
判決
ニューヨーク州南部地区連邦裁判所によると、リップル社はまず約7億2890万ドル相当のXRPを機関投資家やヘッジファンドなどに直接販売した。判決は、これらの「機関投資家向け販売」は連邦証券法に違反する無登録の投資契約の提供および販売にあたるとしている。投資家はリップル社の取り組みから利益を得ることを期待してXRPを購入したと考えられるからだ。
リップル社は、機関投資家への販売で得た資金を「XRPの用途を開発し、XRP取引市場を保護することで、XRPの価値を促進し、増加させる」ために使ったと判決は記している。
SECの申し立ては、機関投資家向け販売については認められたが、それ以外は却下された。
一方、取引所やアルゴリズムを通したXRPの「プログラムによる販売」は、証券の販売には該当しないとされた。理由は、投機的な投資家が「他人の起業家的あるいは経営的な努力からもたらされる利益に対する合理的な期待」を持っていたとSECが断定することはできないためだ。
(11/12)
— Bryan Jacoutot (@BryanJacoutot) July 13, 2023
1) Everyone knew they were buying from Ethereum Foundation (which the Ripple Court found significant) but also,
2) The Eth purchased during the pre-sale was subject to lockup period, which was significant in finding the Institutional Investors bought XRP as a security pic.twitter.com/YQW2Hn0c9S
これがリップルにとって間違いなく勝利であることを軽視するつもりはない。だが、一時的な勝利かもしれない。裁判官は法律を間違えたと思う。
だが、たとえそうでなかったとしても、多くのプロジェクト(イーサリアムを含む)は依然としてリスクにさらされている。そして裁判所は、多くの他の厄介な証券問題を未解決のままにした。
「一般的に投資家として熟練していない、プログラムを通した中庸な購入者が、(機関投資家と)同様の『理解と期待』を持って、SECが強調する複数の文書や声明を読み解くことができたという証拠はない。文書や声明には、8年間にわたって、さまざまなリップルのスピーカーたち(異なる立場や権威の人たち)による、多くのソーシャルメディアプラットフォームやニュースサイトでのコメント(ときに一貫性がないもの)が含まれている」
ガーリングハウスCEOとラーセン氏自身のXRPの売却などはこの範疇に入ると判決は述べている。
SECの2人の幹部に対する「幇助の主張」についてのもう1つの申し立ては、裁判所が「ラーセン氏とガーリングハウス氏が、連邦証券法がXRPに適用されることを知っていたのか、無謀にも無視したのかどうかは明らかではない」と判断したため、却下された。
「私たちは2020年12月に、法律の正しい側におり、歴史の正しい側に立つことになるだろうと述べた。今日の判決に至るまで協力してくれたすべての人に感謝している。これは、アメリカにおけるすべての暗号資産イノベーションのためのものだ。さらに多くのイノベーションが生まれる」と判決の後、ガーリングハウスCEOはツイートした。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Ripple, Crypto Industry Score Partial Win in SEC Court Fight Over XRP