過去1年で不正を疑われる行為が相次いだことを受け、金融安定理事会(FSB)は17日に勧告を発表し、顧客の資産保護と利益相反の回避に関するルールを強化するよう求めた。
FTXやセルシウスの疑惑が背景
FSBはアメリカ、欧州連合(EU)、中国、英国など約20カ国の規制当局で構成される。発表された勧告は、この分野の「一貫性のある包括的な」規制を確保するためのもの。2022年10月に発表された提案に基づいており、破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXや暗号資産レンディングのセルシウス・ネットワーク(Celsius Network)などの企業によって行われたとされる種類の行為を防止することに焦点を当てている。
FSBは、「過去1年間の出来事によって、暗号資産と関連プレーヤーの本質的なボラティリティと構造的脆弱性が浮き彫りになった」とし、新たな規範を示した。この規範によって、主要な暗号資産コングロマリットがその活動と機能の一部を分離することを余儀なくされる可能性がある。
2022年11月に破産を申請したFTXをめぐっては、記録管理の不備や顧客資金の不正使用などの疑惑が相次いでいる。一方、13日にニューヨークで逮捕されたセルシウスの共同創設者であるアレックス・マシンスキー(Alex Mashinsky)元CEOには、投資家を誤解させ、個人的な利益のためにトークン価格を操作したという複数の容疑がかかっているが、無罪を主張している。
FSBは、グローバルルールの厳格化の根拠を説明する際に、シリコンバレー銀行などの暗号資産に特化した銀行が最近破綻したこと、2カ月前にサークル(Circle)社のステーブルコインUSDコイン(USDC)が短期間ながらペッグ解除されたこと、そして暗号通貨の冬の再来となった2022年5月にアルゴリズム型ステーブルコイン「TerraUSD(UST)」が突然崩壊した件にも言及した。
グローバルアプローチはさまざま
主要なグローバルプレーヤーは、さまざまなアプローチで暗号通貨を規制している。EUは暗号資産市場規制法(MiCA)規制として知られる新しい専用の法律を制定しているが、米証券取引委員会(SEC)は、伝統的な金融商品のために100年前に設計された既存ルールを適用できると考えている。
理論的には、FSBの原則は両方のアプローチに適用できる柔軟性を備えるべきだが、FSBは継続性を重視する意向だ。
FSBのジョン・シンドラー(John Schindler)事務総長は報道陣に対し、「この世界的な枠組みは、暗号資産に対する規制のルールを書き換えたり、全く新しく作成したりするものではない」とし、「暗号資産をめぐる活動は、一部の人が考えているほど従来の金融活動と違いはなく、同様のルールが適用されるべきだ」と述べた。
シンドラー事務局長は、「それぞれの法域がこうした基準の施行に取り組んでいる間に、全ての暗号資産プレーヤーがこうした基本的な期待と基準を今すぐ遵守し始めることを奨励する」と表明した。
今回の勧告は協議を経て発表された。この協議では、従来の金融企業が暗号通貨管理の強化を推進する一方、大手暗号資産取引所のバイナンス(Binance)やコインベース(Coinbase)などの企業は、ルールの厳格化によってイノベーションが制限される可能性があると警鐘を鳴らした。
|翻訳:CoinDeskJAPAN
|編集:林理南
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|原文:Financial Stability Board Calls for Tougher Global Crypto Rules After Year of Turmoil