- もともとジョークとして作られたドージコイン（Dogecoin）ブロックチェーンは2014年、通貨発行の熱狂的なペースによってブロック報酬を使い果たす寸前となり、攻撃のリスクにさらされていた。
- そこでライトコイン（Litecoin）ブロックチェーンの生みの親、チャーリー・リー（Charlie Lee）が介入、ライトコインのネットワーク・セキュリティを利用する「マージ・マイニング」を提案した。
- 暗号資産ドージコイン（DOGE）は現在、時価総額110億ドル（約1兆5400億円）にのぼる大規模暗号資産となり、イーロン・マスク氏が頻繁に話題にしている。
業界のベテランの中には、ライトコインを「ゴースト・チェーン」、つまり最先端の技術開発がすっかり姿を消したネットワークと見なす人もいるだろう。しかし、暗号資産トレーダーが、ライトコインの先行きを気にするかもしれない理由がある──ライトコイン・ブロックチェーンは、ドージコイン・ブロックチェーンにセキュリティを提供している。
ソフトウェア・エンジニアのビリー・マーカス（Billy Markus）氏とジャクソン・パルマー（Jackson Palmer）氏が2014年、ジョークとして開発したドージコインは、テスラCEOのイーロン・マスク氏の関心を引きた。マスク氏は、X（旧ツイッター）の1億5000万人のフォロワーに対して、定期的にドージコインについて投稿している。
ドージコインは典型的な「ミームコイン」のひとつだが、もはやジョークではない。時価総額はすでに110億ドル近くに達し、ライトコインの70億ドルを抑えて第8位の暗号資産となっている。
ライトコインがドージコインにセキュリティを提供していることは周知の事実で、米CoinDeskは2014年に記事にしている。だがライトコインが8月3日、4年に一度の半減期で話題となった今、この事実には再び注目すべきだろう。
ライトコインを真似て作らたドージコイン
ライトコインの創設者チャーリー・リー氏は、マサチューセッツ工科大学（MIT）で学んだコンピューター科学者であり、2011年、サトシ・ナカモトが2年前に立ち上げたビットコイン・ブロックチェーンのコードを真似てライトコインを開発した。
その数年後、ビリー・マーカス氏とジャクソン・パーマー氏の2人のソフトウェア・エンジニアが、ライトコインを真似たラッキーコイン（Luckycoin）をさらに真似てドージコインを作ったとされている。しかし、ドージコインの発行モデル（コイン供給の仕組み）は、ビットコインの本来の仕組みから逸脱していたこともあり、複数の欠陥があった。
ビットコイン、ライトコイン、ドージコインは、そのコンセンサス・メカニズムとしてプルーフ・オブ・ワーク（PoW）を採用しており、ブロック報酬と引き換えに、トランザクションを処理し、ネットワークのセキュリティを維持するマイナーに依存している。ビットコインとライトコインの場合、ブロック報酬は約4年ごとに半減期を迎える。
2015年以前のドージコインの半減スケジュールは、まったく対称的で、100mダッシュのようなものだった。ブロックは1分ごとに生成され、報酬は69日ごとに半減、当初設定されていた発行上限の1000億DOGEが枯渇する事態となった。
「ドージコインのネットワーク・セキュリティは急速に低下した」（リー氏）
取引手数料も低すぎて、マイナーがドージコインに関わり、セキュリティを確保するインセンティブがなかったため、ドージコインは攻撃を受け、崩壊の危機に直面した。
ライトコインがセキュリティを提供
「ドージコインはすぐに消滅するよう作られた──今のような、ばかげた存在に成長するなど誰も予想していなかった」と、今はなき投げ銭サービスのDogetipbotを開発したジョシュ・モーランド（Josh Mohland）氏は2014年にレディット（Reddit）に書いている。
状況は非常に悲惨なものとなり、2014年までにドージコインはハードフォークし、ライトコインとの「マージ・マイニング」、つまり補助PoW（AuxPoW）を認めざるを得なくなった。マイナーが両方のブロックチェーンに同時にセキュリティを提供するための方法だ。
「ドージコインを確実な死（つまり、51％攻撃）から救う簡単な方法が間違いなくある。AuxPoWだ」とモーランド氏は続けている。
マージ・マイニングとは、マイナーが同時に2つ以上のブロックチェーンのセキュリティを確保し、パフォーマンスを低下させることなく両方から報酬を受け取ることを言う。補助PoWと呼ばれるのは、このプロセスで、セキュリティの弱いブロックチェーンが、セキュリティの強いブロックチェーンからセキュリティを提供してもらうためだ。リー氏は、ライトコインはドージコインに必要なセキュリティを提供できると述べていた。
「これで、ドージコインは簡単に攻撃されなくなった」とリー氏は述べていた。
ドージコインは今でも約1分おきにブロックを生成しているが、半減期と、1000億DOGEの発行上限はなくなり、1ブロックあたり1万DOGEの報酬を無期限に受け取ることができるようになった。
｜翻訳：CoinDesk JAPAN
｜編集：増田隆幸
｜画像：Unsplash
｜原文：Why You Should Care About Litecoin: It’s the Backbone of Dogecoin
