米暗号資産(仮想通貨)取引大手のコインベース(Coinbase)は米証券取引委員会(SEC)との裁判で、SECが管轄権を大きく逸脱して提訴を行っていると主張し、提訴の棄却を求めた。
投資契約ではなく商品販売だと主張
SECは6月にコインベースを提訴。コインベースが有価証券である暗号資産の未登録のブローカー、取引所および清算機関として活動することで連邦証券法に違反したと主張し、こうした要件を満たすとSECが考える13個の暗号資産を例に挙げた。コインベースは4日に提出した書類で、SECはこれらの事例のいずれにおいても投資契約が関与しているとは主張していないとして反論した。
コインベースは、「コインベースのプラットフォームとPrime(カストディサービス)を介した取引は、インカム(収入)、プロフィット(利益)、または事業資産を反映する将来価値を提供するという契約上の約束ではなく、またそれらを含まない。こうした取引は商品販売であり、支払いと引き換えにデジタルトークンが引き渡された瞬間に双方の義務が完全に解除される」と主張した。
提出書類では、リップル(Ripple)社とSECの裁判で先月下された判決にも言及し、基礎となる事実は「ここで主張されている事実と実質的に同一」であると述べた。この判決では、リップル社の機関顧客への直接販売は有価証券取引であるが、リップル社のプログラム的な販売(誰でも購入できるようにエックス・アール・ピー(XRP)を取引所に上場させること)は有価証券取引ではないとの判決が下された。
さらにコインベースは、コインベースのステーキングとウォレットサービスが証券法に違反しているというSECの主張も同様の理由で棄却されるべきだと主張した。
SECの管轄範囲拡大を指摘
コインベースはまた、以前の申し立てで提起した「重要問題法理(Major Questions Doctrine)」を再度提起。この提訴によってSECの管轄範囲が大幅に拡大され、暗号資産業界が含まれることになると主張した。
コインベースは、ネイティブ暗号資産LBCを販売した暗号資産スタートアップLBRYに対するSECの提訴における公判の記録や、「ハウィーテスト(Howey Test)」の問題を含む以前の事例で出された命令など、10の異なる証拠を申し立てに添付した。ハウィーテストは、1946年に最高裁判所によって設定された基準であり、規制当局が投資契約の構成要素を判断するために利用される。
SECは10月3日までにコインベースの申し立てに対する回答を提出する必要がある。また、コインベースを支持する法廷助言書(第三者による意見陳述書)は8月11日まで提出できる。
コインベースは3日の決算会見で、提訴の棄却を申し立てる意向を示していた。
ポール・グレワル(Paul Grewal)最高法務責任者(CLO)は電話で、コインベースは訴訟に勝てると信じていると表明。「我々は勝つつもりだ。しかし、訴訟だけでなく、SECやアメリカ政府全体と関わるすべての取り組みにおける私たちの目標が、消費者を保護し、イノベーションを促進するとともに、誰もが理解し、従うことができる明確な交通規則を本質的に確立するための規制の明確化を達成することにあると理解することが重要だ」と述べた。
|翻訳・編集:林理南
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|原文:Coinbase Moves to Dismiss SEC Lawsuit, Alleging Crypto Falls Out of Regulator’s Oversight